2006年12月31日

メリー召喚1

「もしもし、わたし、メリーさん・・・今、あなたの後ろにいるの・・・。」

俺はこの瞬間を待ち続けた。
某掲示板で書かれていた方法を忠実にこなし、
この瞬間をようやくにして迎えたわけだ・・・。
俺はゆっくりと振り返った・・・。
そこには、まるでセルロイドで出来たようなしみのない細やかな肌、
黒をベースにふんだんにレースをあしらったロリータファッション、
栗毛色で柔らかなウエーブのかかったセミロングの髪、
身長は135センチといったところか?
ひざを立てて振り返ったおれとちょうど同じぐらいの身長。
ごてごてとした服からすらりと伸びる真っ白な足。
足元はフリルのついた靴下だけで、靴は履いていない。
膨らんだ袖口からは、これもまたすらりとした腕がのび、その手に大きな鎌が握られている。
俺は、口元だけで笑みを表現した。
「メリーさん、ようこそ!」
posted by 126 at 09:29| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー召喚2

俺の第一声に、メリーさんの整った顔に驚きと恐怖がよぎる。
「え?うそ・・・また・・・・う、うそよね?」
ほんのわずかだが、後ろへと下がっているメリーさんと名乗る少女。
「な、なんで、前の場所から500`bも移動してきたのに…」

俺は、微笑みを浮かべたまま、目の前の少女がうろたえるのを眺めていた。
いや、その状況を楽しんでいた。
「前のあの人との繋がりなんか・・・」
そこまで言って、メリーは、薄暗い部屋の中で唯一光を放つものの存在に気がついたようだ。
「パソコン・・・」
そのモニターには、おそらく彼女が「前のあの人」と呼ぶ男が作ったホームページが映し出されていた。

「【完全】☆メリーさん☆【攻略】」

某巨大掲示板のオカルト板に立ったメリーさんに関するスレッドのまとめサイト。
多くの人は、はなから「ネタ」と決めつけ、まあそれなりに楽しんでいたみたいだが、 俺は違った。
数多くの書き込みの中から、管理人が厳選し、実践してきた方法がいくつかあり、それを忠実に守ってきた。
そう、メリーさんの召喚方法について。
メリーの言う「前のあの人」、つまり管理人は、実際にメリーを召喚したと書かれていた。
それは本当のことだったと言う事だ。だとすれば・・・ 奴の突撃レポートにあったこと。 それもまさに真実と言うことだろう。

メリーが、鎌を握り直すのが見える。
「お、怯えることなんか・・・ない。刈ってしまえば・・・お、終わるから・・・」
メリーは、声を振るわせながら、下唇をぎゅっとかみ締めた。握りなおした鎌を静かに振り上げる。

これもまた、まとめサイトや掲示板に書かれていた通りだ。
メリーの持つ鎌。
それは物質を通り抜け、魂を刈るためのものだと言う。
つまり、肉体と魂の結び目を刈り取るのだ。鎌の刃の部分に少しでも当たった場合、俺は死ぬ事になる。

メリーは、振り上げた鎌を俺にめがけてまっすぐに振り下ろしてきた。
俺は、メリーの第一撃目をかわした。
メリーは、振り降ろしざまに、よけた俺の方に視線を向けた。
整った顔に鋭い目。 まったく先ほどまでの、怯えた様子は見えない。
ゾクゾクする。
しかし、見とれている暇はなかった。
メリーの次の攻撃が、俺を襲おうとしていた。
posted by 126 at 09:34| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー召喚3

『柄をつかむべし』
まとめサイトには、そう指示があった。
『メリーの攻撃は恐ろしいほど正確で、狂いがない』 とも・・・。

俺は、自分に身体を攻撃してこようとするメリーの方へと滑り込ませた。
「な、なに?」
予想外の行動に、目を丸くするメリー。
しかし、急な動きに対応するでもなく、鎌は俺の元いた場所をめがけて振り下ろされた。

『メリーの行動は、基本的に恐怖におののき、動けなくなった人間に対応している』
つまり、自分の存在に対して恐怖せずに、自由に動く存在など想定していないのだ。

メリーの懐に入り込んだ俺はメリーが握り締める鎌の柄の部分をつかんだ。
攻略方法が分かっているとはいえ、こちらも命がけだ。
鎌の刃の部分が俺の身体に触れると、俺は死ぬのだから・・・。

「ちょ!放してよ!」
にらみを効かせて、鎌を振りながら、俺の手を振り解こうとするメリー。
しかし、俺は必死でつかみ続けた。

しばらくは、膠着状態が続いた。
メリーは、その小さな体に似つかわしくない力で、俺の手を振り解こうとしていた。
俺は俺で、ここまできたら引き下がれない、いや、もともと引き下がるつもりなどなかった。
それは、決して「死への恐怖」ではない。メリーへの執着だった。

初めてまとめサイトを見たとき、その風貌の描写から、興味を持った。
別段、俺は幼い子どもが好きというわけではない。
つい最近まで付き合っていた彼女は、普通のOLだった。
しかし、まとめサイトで描かれている「管理人が遭遇したメリーの姿」を見たときに
俺は心がざわめくのを感じた。
まとめサイトを読み進めていくと、その管理人が、メリーを手に入れるために費やした努力の数々、
調査検討の数々が描かれていた。
そして、ある手段と手続きを講じて、管理人がメリーと遭遇するくだりは、まるで自分がその場にいるかのようにどきどきした。
俺は、何度も何度もその場面を読み返し、メリーの姿を想像した。
ときめいた。
「俺も、メリーと出会いたい」
そんな淡い夢ともつかない願望が芽生えてきた。
しかし、このときはまだ、自分でその方法と手続きを実行しようとは考えてもいなかった。

俺が、メリーに会うための手順を踏もうと考えたのは、管理人の次の更新があったときだった。
そこには、メリーと遭遇した後の管理人の行動が逐一報告されていた。
画像はなかった。どうやら写真は撮ったが、肝心のメリーはそこにうつっていないとのことだった。
多くの住人は、管理人に対し、「妄想」「ネタ」「釣り」の烙印を押した。
しかし、俺は違った。その後の管理人の行動報告の中に描かれているリアルな情景が 俺を突き動かしたのだ。
posted by 126 at 09:42| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー召喚4

「放しなさい!放さないと・・・」
メリーが激しい口調で叫んでいた。ふとわれに返った俺は、よりいっそう力を込めた。

「放したらどうするんだ?」
余裕はなかった。しかし、俺は、余裕を見せ付けるように、にやりと笑って見せた。

「決まってるでしょ・・・」
「俺を殺すんだよな」
「・・・・・」
メリーは何も言わずににらみ返してきた。
凄みのある鋭い視線。しかし、その視線の鋭さすら美しく整った顔を引き立たせていた。
他のものを近づけがたい高貴な印象さえ伺わせる表情。
一瞬見とれそうになるのを何とか押さえ込み、メリーに言葉をかけた。

「なぜ、俺が君の言う『前のあの人』の行った手順を知っていたか・・・」
「え?」
メリーの表情が一瞬、驚きに変わる。攻撃性を最前線に持ってきていた表情が戸惑いをあらわにした。
それは最初に出会ったときのおびえに似た表情だった。
おそらく『前のあの人』つまりまとめサイトの管理人との出会いを思いだしているんだろう。

メリーは俺から目をそらせた。
今までの威圧的な視線は、そこにはなかった。
おびえ、戸惑い、不安・・・。そのようなマイナスの感情がその目からうかがえた。
目の奥底に宿る生命力、メリーを「イキモノ」にしている力の根源に触れたような気がした。
先ほどは、相手に対する攻撃性を帯びた生命力あふれんばかりの高貴な視線に うっとりしたが、
今度は、俺の中にある被虐性を充分に意識させるものだった。
俺は深く息を吸い、そして吐き出した。

「おそらくは、君が『前の人』のもとを去って、わずか2日だと言うのに、なぜ君の事を知っている人間が
遠く離れたこんな場所にいるのか・・・。君には分からないはずだ」

メリーは、わずかだが震え始めていた。見ているだけでは分からないかすかな震えは、
メリーの唯一の武器である鎌の柄を通して俺に伝わっていた。
メリーは、ゆっくりと目を閉じた。

・・・・・あきらめたのか?

俺は、ゆっくりと鎌を彼女から引き寄せようとした。
しかし、その瞬間、メリーは目を見開き、生命力を取り戻した視線を僕にぶつけてきた。

「わからない。でも、もうあんな・・・・あんなつらい思いはしたくない!」
posted by 126 at 09:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー召喚5

一瞬、気を抜いていたのは、俺のほうだった。
危うく鎌の柄から手を離しそうになる。

「死にたくなかったらいいなさい!どうしてあなたが私のことを、そして『前のあの人』のことを知っているのか・・・」

凄みを増したメリーの目、その中に自分が映るほど近づいていること。
そして、怒りに燃えるほどに美しくなるメリーに身震いするほどの感動を覚えながら、
先ほどの生命力をなくしたかのように打ちひしがれる弱弱しいメリーにも、俺は惹かれていた。
(・・・管理人が狂ってしまうのも、あんな行動に出たのも・・・無理はない・・・)
高貴なもの、美しいものほど、むちゃくちゃにしたくなる衝動が、人間にはあるのかもしれない。

「なぜ?・・・教えてあげよう。しかし、本当にいいのか?」
俺は含みを持たせてメリーに問いかけた。
「どういうことよ?」
メリーの目にまた少しのおびえが見えたことを俺は見逃さなかった。
「君の言う『前のあの人』から遠く離れた俺が、君の事をどれほど知っているか、そしてそれだけじゃない真実を
知って、後悔しないか?と聞いたんだよ」

俺はなるべく優しく言った。怒りを呼び起こさないように慎重に・・・。
冷静になればなるほど、メリーにとっては不可解で、得たいの知れない存在が、今の俺だ。

「ど、どういうことよ・・・私の何を知っているっていうのよ・・・」

メリーの中で不安が明らかに増大している。それは先ほどと同じように目の輝きとわずかな体の震えから感じ取ることができた。

「すべてではないけどね・・・ある程度のことは知っているよ」
「・・・・・」
「君が、もともとは一体の人形だったこと。しかし、ある少女の魂とともに生身の肉体を授かっていること・・・」

メリーの目が大きく見開かれた。もう、腕にはほとんど力が入っていなかった。鎌を奪おうと思えば奪えた。
しかし、俺は言葉を続けた。

「その少女は、不幸な運命を背負って、11歳の若さで死んだ」

彼女の目は、過去に向かっていた。人形としての自分ではなく、「人間」だったころの自分を見つめていた。
おそらくは何度も何度も、そうやって自分の忌まわしい過去を振り返ってきたことだろう。

「そして、ぼろぼろになって捨てられてしまった『メリー人形』と同化した。」
「・・・・・」
「さらには、『メリー人形』の想いに引きづられ、持ち主の下へと現れるようになった。次第に迫りくる恐怖とともに・・・。」
なすすべもなく、恐怖におののく人の前に現れ、その悔いを糧にしてきた。
それが、「メリーさんの呪い」という彼女にとっての復讐であり、また、彼女の魂を救うものであったはずだ。

posted by 126 at 09:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー召喚6

「・・・怖がらせれば、それで・・・よかったの・・・でも・・・」

彼女の目は、おびえていた。今までに幾人もの魂を刈ってきたものの懺悔がそこにあった。

「でも・・・とめることはできなかったの・・・私の中の・・・怒りが・・・」

彼女は、鎌にしがみつくようにたっていた。すでにひざの力すら失っていた。

伏せた顔。
前にたれ落ちた髪が、彼女の表情を隠していた。
俺は片手でしっかりと鎌を握りながら、彼女の頭をなでた。
「・・・え?」
驚いた表情で、顔を上げるメリー。
ほんの20センチ前にその整った顔があった。

「な・・・なに?」

彼女は、俺の行動が理解できないものだったようだ。俺にとっては至極当然の行動だったのだが・・・。

「刈りたかったら、刈ってもかまわない。」

俺は、メリーの目を見ていった。
ここからは、俺のオリジナルだ。
まとめサイトにも載っていない。危険な賭けだった。
しかし、俺にとってはそうすることしかできなかった。

「死ぬのが怖いわけじゃない・・・。君にどうしても会いたかった・・・。」

自分の胸の中にあるものをメリーに向かってぶつけるより他には・・・。
正直に、素直に、俺の本当の気持ちを伝えるしか・・・俺にはできなかった。
もしも、それで、鎌を振り下ろされても、今度はそれをそのまま受けるつもりだった。

「・・・・・」
目を見開いたまま、混乱しているメリーは、いつの間にか鎌を手放していた。


「君を知りたかったんだ・・・。だから、少しだけでいい。時間が欲しい」

「・・・・・」

彼女にとって、それは予想もしない言葉だっただろう。
おびえて命乞いをする人間か、何もわからずに死んでいく・・・それが、彼女の前にたったものの宿命だった。
唯一の例外は、「まとめサイトの管理人」だ。
おそらくは彼もまた、この鎌の前に沈んでいったのだろう。
ほぼ毎日・・・いや数時間おきに更新していたサイトが、この2日間まったく更新されていない。
彼の最後の言葉・・・。結果的にそうなってしまった最後の更新には、こう告げられていた。
posted by 126 at 15:41| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー召喚7

『自分の中の、悪魔・・・メリーの高貴さ、純粋さは、恐ろしい悪魔を呼び覚ます・・・悪魔を・・・滅すより他に方法はない・・・。』

まとめサイトに描かれた言葉にできないほどの情景、彼女の身に振りそそいでしまった、彼女が今までに味わったことのない不幸、そうだ、これまで彼女が不幸な身の上だったとしても、これほどではなかっただろう。
今、その不幸の中から彼女は抜け出している。それはまさに彼女を束縛していたものの消滅を意味するのだろう。
彼女の前に立ちはだかった、唯一の例外・・・。
それがどのように消滅して言ったのかは知らない。また、その存在に対して彼女がどのような感情を抱いたのかも想像をすることが出来ない。
あんなにも気丈な彼女が、彼のことを話題にするだけでうろたえるのだから、
その感情はただならぬものであっただろうと言うことしか・・・。

しかし今、彼女はまったく違い方向の驚きで我を忘れている。
呆然とした顔・・・半ばあきれたような顔で僕を凝視している。
当然目の前にいる人間を有無を言わさず恐怖の中で沈めてきた彼女だ。
相手との会話自体がほとんどありえなかっただろう。
対象となる人間を駆ることこそが、彼女にとっての救済であるはずなのに、その相手から言われた言葉。それが・・・。
「君を知りたい・・・」
だったのだから。
「な、なに馬鹿なこと言ってるのよ・・・」
彼女が何とか搾り出した台詞は少し間の抜けたものだった。


「俺は、君とこうして話をしたかったんだ。多分、怖がらせてしまっただろうことは、謝る」

メリーは、自分が唯一の武器である鎌を手に持っていないことをまったく忘れていた。
それほどまでに、別の意味でうろたえているといっていい。

「だ、誰が怖がってるって言うのよ・・・わ、私が怖がらせることはあっても、怖がるわけないでしょ・・・。」

俺の顔をじっと見ながら、うろたえているのを必死に隠そうとしている。
しかし、少女の外見と同じように彼女の表情やしぐさも、人をだますことには慣れてはいなかった。
その証拠に、本来鎌をしっかりと握り締めるはずの両手は、スカートのすそを力いっぱいつかんでいた。
posted by 126 at 15:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー召喚8

「そうだね。俺のことを怖がるわけがないよね」
「あ、当たり前じゃない!」

メリーは少し怒った顔をで俺のことをにらみつける。その表情、最初に出会ったときの完璧に整った余裕を持った薄笑いとは違い、ココロの中まで見えてきそうな、素直な表情だった。そう、にらんでいるものの目は、まだ、戸惑いを色濃くさせている。
俺の次の言葉を、少し不安になりながらも、待っている。そんな様子が表情から十分に伝わった。
そんな彼女に、俺は言葉を続けた。

「君の事を、大切にしたいと思っているんだよ・・・」
俺は、このときのメリーの顔を一生忘れないだろう。
目を大きく見開き、まったく無防備に驚きの表情を見せていた。
ーーーーー抱きしめたい・・・。
俺の中にその思いが芽生えるには、十分すぎるかわいさだった。
しかし、俺は、芽生えてきた純粋ないとおしさとともに、わずかながら
どす黒くて制御の利かない力を秘めたナニカが浮上してくるのも同時に感じた。

「な、なに、い・・・いってる・・・の、のよ・・・」
何とか声を絞り出して、俺への抗議を訴えようとしているメリー。
しかし、うまくいかずに顔を真っ赤にさせながら、どもってしまう。
そのしぐさ一つ一つもまた、ボクの感情を揺さぶった。
ここで、静かにボクは鎌を床に置いた。
posted by 126 at 15:45| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー召喚9

「さっきも言ったけどね、殺したかったらここで今俺のことを殺せばいい・・・」
「・・・・・」
「俺が、君の事を知って、本当に君を大切にしたいと思った・・・と言うことを知っていてくれればいい」

メリーは鎌を見ることもせずに、俺の顔を真っ赤な顔でまじまじと見つめている。
「鎌は、君の自由になるところにこうして置いておくよ」
メリーは、俺に言われて初めて自分が唯一の武器である鎌が自分の手にないことに気がつく。
「お、おびえてもいない相手を、刈るなんて、私のプライドが許さない・・・」
鎌を見るでもなく、俺を見るでもなく、部屋も隅っこに目線を送りながら、小さな声でメリーは言った。
その顔は、すねた子どものような、少しふくれっつらにもみえる。
「絶対におびえさせてやるから・・・」

俺は、メリーの呟きを、聞こえない振りをして、鎌を拾い上げた。
以前に、もしもこのようなことになったら、鎌を飾ろうと思ってつけておいた金具が白い壁に設置してある。
そこに置き去りになっていた鎌を引っ掛けた。
鎌は、まるで一枚の絵のように威厳と誇りを持って、白い壁に収まった。
「いつでも手に取れるだろ。俺の言っていることが嘘だと感じたり、俺のことを信じられなくなったら、いつでも・・・」
「・・・・う、うん」
上目遣いに俺のことを見てくるメリー。どういうリアクションをしていいのかわからずに思わずうなづいてしまった・・・そんな感じだった。
俺は、そんなメリーを見て微笑んだ。

「なに、笑ってるのよ!別にあなたのことを信用したわけじゃないし、おびえていないような相手を手にかけたってなったら、私のプライドが・・・」
「わかってる。俺がおびえて『助けてくれ!』って叫ぶまでは、君と一緒に入れるというわけなんだね」
「一緒にって・・・そ、そんなんじゃなくって、えっと、あの・・・」
あまりからかいすぎると、無口になってしまうようだ。きれいな顔が真っ赤になりながら困っているのを見るのは悪くはない。 すぐにでも抱きしめたくなる衝動を押さえ込むのに必死になりながら、俺は押入れに向かった。

突然動き出した俺を興味深く見るメリー。その視線を感じながら、俺は微笑がこぼれてくるのをとめられなかった。
・・・・・驚くかな?・・・普通の人間の感覚だと・・・ただの変態なんだが・・・。
「さて、メリー。この中には、いったい何があるでしょう」
「え?」
突然の問いに戸惑いを見せる。わかるわけがないだろう。
「俺が君の事を大事にしたいと言う証拠を見せる。気に入ってもらえたら、うれしいのだけれど・・・」
俺は押入れの扉を開けた。
posted by 126 at 15:48| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー召喚10

「え?こ、これって・・・」
俺はメリーの驚く顔が好きだ。普段はつんと澄ましていて、その冷ややかな表情が何よりも似合う整った顔をしているのに、ひとたび感情をあらわにすると一変して幼く見える純粋な表情。
今まではそれは想像の中の物でしかなかった。俺は微笑みながら、驚きで固まっているメリーに言葉をかけた。
「全部君のものだよ。俺もそんなに裕福なわけではないけどね。何とか、買い揃えてみた」
そこは押入れを改造したクローゼットになっていた。クローゼットの中には、20着ほどの洋服が華やかに並んでいた。
「すっごーい!」
俺がそばにいることを忘れたかの用に無邪気に洋服に近づく。それぞれの服を手に取り、自分の体にあてがってみては、別の洋服を手に取る・・・。
俺はその様子を眺めていた。そうだ、俺はメリーのこんな姿が見たかった。その存在がどのようなものか、どのような意味を持っているのか、それは関係ない。
ただ、自分の魂を揺るがした女の子の笑顔が見たい。ただそれだけだった。もちろん、ほんの数日前まで彼女を蝕んでいた不幸のこともその一つの原因なのかも知れない。
何よりも、彼女に笑ってほしい。その笑顔を見たい。本当にそれだけだった。

「気に入ってくれた?」
鏡を見ながら夢中になっているメリーは、
「うん!」
素直に返事をした。そして、俺の方を振り返って、明るい笑顔を見せた。
俺と目が合うと、ナニカに気がついたように洋服をさっと後ろに隠すように持ち替え、顔を伏せた。
耳が真っ赤だ。
「・・・別に喜んでるわけじゃない・・・んだよ。せっかくの洋服だから、着てあげないとかわいそうだから・・・。」
「そうだね、せっかくそろえたんだから、着てもらわないと、俺もかわいそうだよ」
「・・・あ、あなたのためになんか、着るわけじゃないんだからね!」
あわてて顔を上げたメリーの少しすねたような顔は真っ赤だった。

真っ赤な顔のまま、散々面かした服をそそくさと片付け始めるメリー。
次第に窓からは、朝日が差し込めてきた。
「メリーもう少ししたら、俺は仕事に行くけど、帰ってくるまでいてくれるよね?」
メリーは洋服を抱えたまま、きょとんとした表情でボクを見上げる。
「今日はそんなに忙しくないから、すぐに帰ってくる」
少し不安げな表情で、何も言わずうなずくメリー。
『そんなのきまってるでしょ!あんたを怖がらせるまで帰るわけがないんだから!』
って言う反応を期待したんだが・・・。少し調子が狂った・・・。
「俺のベットを使っていいからね」
というと、少し悲しげな表情で、やはり素直にうなずいた。
それからは何も言わずに服を片付けて、俺が用意をする様子をじっと見ているメリー。
「どうしたの?」
と声をかけても、首を横に振るだけで、今にも泣き出しそうな表情で俺を見ている。
・・・会社休もうかな・・・。
一瞬そう思ったが、今日はどうしてもはずせない会議がある。
俺は用意が済むと、
「出来るだけ早く帰るからね」
と声をかけ、家を出た。メリーは、ただうなづくだけだった・・・。
posted by 126 at 15:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 第一の情景「メリー召喚」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。