2007年01月03日

麻子襲撃1

落ち着け落ち着け落ち着け・・。俺はメリーを大切にするんだ、俺はメリーを大切に・・。
「むこうを向いててください!」
真っ赤な顔をして必死になって訴える姿。
・・・まとめサイトの管理人がおかしくなったのは、実は鎌に触れたからではないのかも知れない。
と馬鹿なことを思いながら、
「は、はい」
と元気に返事をして、俺はメリーに背中を向けた。
メリーは俺のすぐ後ろで、
「絶対にこっち向いちゃだめですよ・・・」
耳元でささやいた。
その言葉は、確かに耳から入ってきているのだが、背中から胸に向かって突き抜けていく。
・・・こいつわざとなんじゃないのか?俺は胸の苦しさとどきどきを何とか押さえ込みながらも、
「は、はい!」
と元気に声を上げた。こんなにも幼い風貌の少女に翻弄されている自分。俺はその事実に驚
いていた。メリーの言いつけどおり、部屋の真ん中でメリーに背を向けて正座をして待っている。そぞかし他人が見たら、おかしな情景だろう。
俺は少しにやつきながら顔を上げた。・・・・・。
顔を上げた俺の視線の向こうに、玄関から顔を出している麻子がゆがめた顔のまま固まっていた。

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麻子襲撃2

「・・・・・」
何かを話そうとゆがめた顔のまま口をパクパクさせている麻子。しかし声は出ないようだ。
俺は、麻子に向かって、ニヘッと微笑みかけた。麻子のゆがんだ顔が、次第に泣き顔へと変
化し始める。しかし、仕方がないだろう?後ろでお着替え中の少女、しかもさっき迷子だと
言ってつれて帰ってきたはずの少女が、お着替え中の状況の中で大の男が正座をしてにへらにへ
ら薄ら笑いを浮かべている。
・・・いや、まて、まだ何とかなる!今のこの状況なら、帰りに買ってきた服に着替えてい
るだけだとそう説明することも可能だ!そうだ、そういうことに・・・。
まてまてまて!問題はある。大きな問題がそこには存在している。
麻・子・が・い・つ・か・ら・見・て・い・た・か・?
俺は今にも大声を出しかねない麻子の目の前に移動した。俺の身体で麻子がメリーから見え
ないように死角を作りながら、さらに麻子の口をふさいだ。
麻子の口をふさぐのは、本日2回目だ。
「あ、あの・・・メリー、俺外に出てるから・・・。終わったら呼んでくれ」
と背中越しにメリーに声をかける。
「え?あ・・・いいのに・・・」
という、麻子さえいなければ、そうですか!と元の正座に戻ってしまいそうな切ない声を振
り切って、俺は麻子を押し出して外へと出た。
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麻子襲撃3

マンションの通路部分に麻子を押し出した。俺たちはお互いよつんばいのまましばらく呼吸
を整えた。
「麻子、あのな・・・」
俺が声をかけようと顔を上げたら、麻子は泣き顔で俺を指差しながら、
「ここに変態がいるよぉ」
と言った・・・。

・・・へ、変態・・・・。
俺は口をあけたまま、愕然としていた。よりによって・・・変態とは・・・。
「変態だよぉ・・・変態がいるよぉ・・・」
ひっくひっくと嗚咽を交えながら、麻子は言葉を続けた。
「いや、だから・・・」
「なによ・・・言い訳するわけ?」
「いえ・・・」
麻子にはやはり勝てそうになかった。鼻をすすりながら、俺をにらみつけている。
「な、何か言いたいことがあったら言いなさいよ!」
とりあえず、言い訳・・・いや、もしもここで言い訳をして、それが嘘だとわかったときの
方がダメージは大きい。もちろん俺が受ける物理的なダメージだが・・・。
やっぱり、本当のことを・・・いや、妖怪や幽霊の類が出たらこの手で捕まえて一儲けして
やると公言している麻子に、メリーの本当の話なんて・・・。
俺は大きく息を吸い込み、意を決して麻子に問いかけた。
「いつから見てた?」
「は?」
「だからいつ俺の部屋に入ったんだよ」
「あんたね。何を言い出すかと思えば、こっちが話を聞いてあげようって言うのに、なんで
あんたが質問してるのよ!」
泣き顔から怒り顔へと表情の変わっていった麻子。まあ、泣かれるよりいい。怒ってるほう
が麻子らしい。勝気で男勝りであっさりとしてるくせにおせっかい焼きの姉御肌。当然情が
深いわけで、涙もろい。
「わかった。話す・・・」
仕方がない。麻子がいつから見てたかは、確認できないが、もしも俺が正座をしている状態
からであれば、問題はない。迷子の彼女に服を買ってあげたんだと話せば何とかなるだろう
(ならない気もするが)
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麻子襲撃4

もしも、その前、俺がメリーの着替えに見とれて固まっているときから見ていたのであれば・・・。何を言い訳しても殺される。どうせならメリーに殺されたかった。絶対に素直には殺してくれなさそうだよ、麻子は。
麻子は、じっと俺の言葉を待っていた。
「彼女、本当に迷子なんだよ」
これは本当だ。
俺が召喚してしまったがために目的を果たせないでいるために帰れない迷子だ。別の世界へと帰り道がわからない、わかっているけど、帰れない迷子だ。
俺は自分に言い聞かせるようにして、言葉を選びながら続けた。
「彼女とは、昨日の夜に出会った」
これも本当だ。
俺が召喚したのだから。しかし、そのことは言えない。話をするうちに、メリーの真実を話すことはメリーを裏切ってしまう気がして、麻子にだけは本当のことを言ってしまいたい衝動に駆られたが、それは抑えた。
「もう少し時間がたたないと、帰れないので、俺のところにいる」
真剣に話した。本当の部分を。言っても差し支えのない部分を。メリーが実はこの世のものではないと言うことを告げないように、でも嘘は言わないように。
「そして今は、着替え中だ・・・」
その台詞が終わる前に麻子に殴られる・平手打ちなんかじゃない・・・。グーだ。
「その着替えをじっと見ていたあんたのこと変態だって言ってるのよ!」
・・・もうだめだ。俺の人生は終わった。そうだ、俺の人生はただの変態として終わりを迎えるのだ・・・。
廊下のコンクリートの上で仰向けに横たわる俺を怒った顔のまま見下している麻子。
「まったくどういう事情か知らないけど、私は女の子の着替えをこっそりと除くような男に育てた覚えはない」
・・・・育てられた覚えもないんだが・・・。そんなことを口に出そうものなら、とたんにもう一発「グー」で殴られる。

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麻子襲撃5

しかし、麻子には、俺がメリーの着替えをじっと見ていたことがあまりに大きなショックで他のこと・・・、メリーがなぜうちにいるのか、どこの子なのか、俺との関係は?といった ことにまでは頭が回っていないようだった。
おせっかいでいろいろと首を突っ込む割に単純なこいつのコトだ。俺のコトを「悪い」と決め付けると、次は・・・。
「あの女の子、メリーちゃんだったっけ?かわいそうに!」
・・・やはりそうなるわけだな・・・。
「上田たかし!」
突然名前を呼ばれてビクッとする。
「さっさと起きる!」
「は、はい」
「そこに正座!」
麻子は体育の教官のような勢いで命令をする。
「はい」
逆らえない・・・。俺はひんやりとしたコンクリートの上に正座をした。
「私は今からかわいそうなメリーちゃんを慰めてくるから、そこでそのまま待つこと!」
「は、はい」
麻子は俺の横を通りドアを開けた。そこには白いワンピースに着替えたメリーが、玄関においてあったほうきを両手で握り締めて立っていた。
下唇をかみながら、麻子をにらみつけている。もしかして・・・。
着替えが終わって、外を見たら、俺が攻撃を受けてノックダウン・・・。ほうきを持って、俺を助けに・・・。いや、そんなことはないだろう・・・。
俺の頭の中には、今日手をつないだときの照れた顔、うれしそうにはしゃぐ姿、そして、泣 き出しそうになりながら「大切にしてください」と言ったメリーの切ない顔が思い浮かんでいた。まさか、メリーは、俺に惚れてくれているんじゃないのか?
コンクリートの床の上で正座をさせられながら、自然と顔がにやけてくる。

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2007年01月05日

麻子襲撃6

「なにーーー!かわいい!」
俺は麻子の黄色い声で現実へと引き戻された。
メリーは相変わらず、ほうきを大事そうに抱え、少し震えていた。今日の昼間のトイレでの
威勢のよい麻子、そして今俺をぶちのめした麻子を見た後だ、ほうき一本ぐらいでは太刀打
ちできないのはわかるだろう。
麻子もメリーの抱えているほうきが気になったらしく、
「ほうき?どうしたの?そうじ?」
と聞いてみたりする。メリーは首を横に振るだけだ。
「掃除でもないのに、なんでほうきもってるの?それをおいて中に入りましょう」
と麻子はほうきを取り上げようとした。
しかし、メリーはほうきをはなそうとせず、
「あ、ごめんね。そのほうきって、何か大切なものなのかな?」
麻子はほうきをあきらめた。
・・・・大切・・・。俺の中で何かが引っかかる・・・。
ーーーーーーーー大切にしてください・・・。
それはさきほど部屋の中で聞いたメリーの言葉。
メリーは、麻子の言葉に驚いた様子で、ほうきと麻子を見比べて、悲しそうに首を横に振っ
た。その様子をじっと見ていた麻子は、メリーに優しく微笑みかけて、
「私にこんなかわいい妹がいたらなぁ・・・」
とメリーの髪をなでた。メリーは、一瞬びくッと身体をこわばらせたが、何度も髪をなでら
れるうちに緊張を解いて、麻子の方を見た。
麻子は俺の方を見ていた。
「こんな変態を弟みたいに思ったりしなくてすんだんだよ」
・・・・同じ年だって・・・。
麻子は俺から目線をはずして、ゆっくりと流れているメリーの髪の毛を見ていた。
「しかも、それを恋愛感情と間違えたりしなくてすんだのになぁ」
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麻子襲撃7

・・・それはそうかも知れない。俺はずっと麻子には敵わなかった。俺の中でもこいつは姉貴に近い存在だったかも知れない。俺が親父の所に引き取られてから15年。麻子はいつでも俺のそばにいた。俺は愛情に飢えていたのかも知れない。麻子に甘えた。そして、世間が広くなると同時に俺だけの麻子ではないことに我慢できずに、別れを告げた。
そのとき麻子に告げた理由が何だったのかは覚えていない。けれど、本当の理由は他人の世話を焼く麻子を見るのが耐えられなかったことだ。今では、麻子のおせっかいな姿を見ても平気になったが、それまでに3年かかっている。
別れを告げてからも、麻子の態度は変わらなかった。だから、こんなふうにしみじみと俺と付き合っていたことを語る姿は初めて見る。麻子は麻子で、俺への気持ちを「弟に対するもの」だったと。肉親に近い気持ちだったと・・・。いや、「恋愛感情と勘違いしていた」だ けなんだと、そう思いこもうとしていたのだろうか?
俺は勝手に「麻子は平気なんだ」と、俺がいなくても平気なんだとそう思い込んでいた。
実際平気なんだろうが・・・。それにしては俺に対しての世話の焼き方も変わっていなかった。今思うと、今のあいつの少しさびしそうな表情を見ると、もしかしたら麻子もつらかったんだろうか?と思ってしまう。
あのときの麻子は「そうだね、あんたももう少し大人にならなきゃね」と笑った。
そんな別れだった。
メリーは、不思議そうな顔で麻子の事を見ていた。
俺は麻子から視線をそらした。罪悪感が俺の中にあった。麻子の視線に耐えられない後ろめ
たさ。それは、その当時麻子の気持ちを考えずに、自分の不快感を解消するために麻子との
別れを選んだことへの罪悪感なのか、今ふと思った麻子の気持ちを知らずに今まで普通に過
ごしてきたことへの気持ちなのか、それとも、麻子にメリーについての本当の話をしていな
いことから来るのか、わからなかった。
視線の端っこで、麻子が口の端をニッとあげて笑っていた。いたずらっ子のような笑顔、

でも今日のそれは「仕方がないわね・・・」と語っているように見えた。

posted by 126 at 01:36| Comment(0) | TrackBack(0) | 第四の情景「麻子襲撃」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

麻子襲撃8

麻子はメリーに向き直った。
「メリーちゃんだっけ」
メリーは、きょとんとした様子でうなづいた。
「あなたみたいな妹がいたら、私、本当に大切にするのにね。馬鹿弟と違って」
その言葉は、情けなくうつむいてしまっている俺に向けられたものだ。
しかし、俺の中で何かが引っかかった。
俺は、勢い良く顔を上げた。急に動きを見せた俺に、麻子がびっくりして、
「な、なによ!や、やるき?」
と攻撃態勢に入った。馬鹿と言われた俺が怒ったと勘違いしたのだろう。
俺の視線は、メリーに注がれていた。
先ほどまでのきょとんとした子どものような表情のメリーの中になかった、泣き出しそうな潤んだ視線で、じっと、麻子を見ていた。
あのとき、俺に抱きついたのと同じ潤んだ目をしている。俺の視線に気がついた麻子が視線の先にあるものを確認した。潤んだ瞳でじっと見つめるメリー。
「ど、どうしたの?」
麻子は、今にも泣き出しそうな表情にあわてていた。
「・・・大切にしてくれる?」
メリーは、細い声で麻子に言い、麻子はニッと麻子スマイルを返してうなずく。そして、

「うーえーだーたーかーしー」
と俺をどなりつけようとした。
「あんた一体この子に何したのよ!変態!」
何を誤解したのか知らないが、俺は愕然として、メリーを見つめていた。
そうだ・・・。
そうなのだ・・・。
俺はひとつの事実に行きついていた。
posted by 126 at 01:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 第四の情景「麻子襲撃」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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