2007年01月05日

本当のこと1

首にぶら下がろうとしているメリーのために少しかがむ。俺のほほに自分のほほを押し付けながら、

「約束よ」

と耳元でささやく。見た目の子どもっぽさとは裏腹に、その言葉にはゾクッとするつやっぽさが

あった。俺は驚いて、しがみついているメリーを引き離して、その顔を見た。

先ほどの笑顔から、変わって、真っ赤になった顔、はにかんだような口元、一瞬俺の目を見て、

恥ずかしくて視線を泳がせる姿。言ってしまった言葉に戸惑うような素振り。

 

キキキキキか、かわいいキキキ

 

固まってしまい、じっとメリーを見つめている俺の視線に耐えられなくなったのか、

首に回した手に力を込めて、再び首にしがみつく。

「あんまり、じっと見ないでよキキキ

首筋から背筋にかけて、続々としたものか駆け下りていく。

「は、恥ずかしいんだからねキキキ

と耳元でささやく。

 

キキキキ落ち着け!落ち着け、俺!

 

安心もあったが、それ以上に、メリーのかわいさ、華奢なわりにやわらかい体、鼻をくすぐる

髪の毛のふわっとした香りキキキ

俺は返事の代わりに、メリーを抱きしめた。あーしあわせだぁキキキ

とメリーの髪の毛にうずめていた顔を上げ、幸せをかみしめている俺の視線にキキキ

麻子の変な顔が目に入った。

変な顔といっても、もともと麻子は少しボーイッシュできれいな顔をしている。

そのきれいな顔が、おもわず顔をしかめて見返してしまうほどゆがんでいたキキキ

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本当のこと2

俺の顔・・・ニヘラニヘラとしただらしない笑顔が張り付いていることだろう俺の顔を見ながら、とんでもなく気持ちの悪いものを見るように、顔をゆがめる麻子。

とにかく、これ以上マンションの通路部分でわけの分からないことをし続けるわけに行かない。

俺はメリーを首にぶら下げたまま、麻子の腕を引っ張った。

麻子は俺に腕をつかまれた事を拒否するわけでもなく、ゆがんだ顔のまま俺の顔を見続け、うわごとのように「変態だよぉキキキここに変態がいるよぉ」と繰り返しつぶやいていた。

 

何とか、部屋に転がり込み、麻子を座らせる。抱っこの形でぶら下がっていたメリーを首にまとわりつかせたまま、後ろに回しておんぶの形をとった。

顔をゆがめたまま、「変態、変態」を繰り返す麻子の目の前に座って、麻子の目の前で大きな音で手をたたく。一瞬ビクッとして、麻子は正気に戻った。俺と俺の背後でニコニコとご機嫌なメリーを交互に見比べた。

「誘拐したわけじゃないんだキキキ

やはり俺の事を少女誘拐犯と思っていたみたいだ。確かに、メリーを抱きしめたときの俺の幸福感は何者にも変えがたいモノがあった。それで顔がにやけるのも仕方がないだろう。

しかし、その俺の顔を見て、変態と思う麻子キキキキそれもまた仕方がないかキキキ

「それで、もう一回聞くけど、この子は誰で、何でここにいるの?」

直球勝負で言葉を投げかけてくる麻子。すっかりもとの様子に戻ったようだった。

さて、本当のことを話すべきか?先ほど麻子はメリーの姿を見て、単純にかわいいとそう思ったようだ。当然のことだがメリーはきれいでかわいい。麻子の保護欲が刺激されるにふさわしい可憐さと健気な雰囲気も兼ね備えている。表情を隠したとたんにかわいさが消え去り、近寄りがたい高貴な冷たさが現れるが、今のメリーには、無邪気なその辺にいる少女のキキキいやその辺にいる少女のほうが複雑なのではないだろうかと思わせる明るいかわいさがあった。

そんなメリーがたとえ「人外のもの」だとして、乱暴な態度をとるとは思えなかった。
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本当のこと3

俺は、後ろにへばりついているメリーをそっと見た。メリーの顔・・・・表情はニコニコしているのに、目が笑っていない。その目は麻子をじっと見つめていた。

「あなたも私のこと、大切にしてくれるのよね」

その言葉は、メリーから麻子に放たれた。少しづつメリーの表情が、かわいいだけではないものに変化していくような気がした。しかし、その変化は先ほど麻子の前で見せたようなスイッチの入ってしまったものではなくメリーが自分の意思を持ってその感情を表情に織り交ぜているような気がした。麻子もその変化に気がついたのかメリーの顔をじっと見る。

そして、麻子の表情もまた変化した。メリーと同様に笑っていない目、口の端っこだけをきゅっと吊り上げる麻子スマイル。何でだろう?麻子のこの表情は、本当の攻撃態勢をとったときに現れるものだ。お互いがにらみ合うような緊迫した状況の中で、俺だけが何が起こっているのかわからずにうろたえていた。

「大切にしてあげるわよ。あなたが何者であってもね」

麻子が静かに、しかも迫力のある声で言ってのけた。

何者キキキキキキ麻子、気がついたのか?メリーが人外のものであることをキキキ

「ふふふ」

俺の背中でメリーが笑い出した。どうしたんだ?

「ふふふふふ」

俺の正面で麻子までもが笑い出した。なにが起こったんだ?

「この子たいしたもんだわ。このあたしにガン飛ばしてくるんだもの」

ガン飛ばす?メリーがキキキ。やめてくれ!かわいくって、きれいでお上品なメリーが・・・・ガン飛ばすなんて・・・・大体いつの言葉だよ。

「お姉さん、強そうね。」

「まあ、あなたも相当なものじゃないの?」

お互いに表面でにこやかにしながら、相手の実力を探っていたのか?麻子に対しておびえるそぶりを見せていたメリーはキキキあのか弱く繊細なメリーはどこにいったんだ?

「お姉さんに話して。私が何なのか。何故ここにいるのか。」

メリーは、俺の耳元で言った。

「そして、あなたが何故私を呼んだのか、どこまで私のことを知っているのか。」

笑顔が消えたが、でも、柔らかい表情はそのままだった。

「私、まだあなたから、あなたの口からそれを聞いてないもの」

俺の・・・口から?
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本当のこと4

「まだね、あなたの口から聞いてないんだよ・・・」

耳たぶに、メリーの唇がかすかに触れる。少し前までのメリーと今のメリーでは何かが確実に違っていた。最初に出会ったときの鎌を振り回していた怒りとプライドの塊のようなメリーとも、俺の事を追いかけて会社にやってきたおびえた小動物のようなメリーとも違う。俺がどぎまぎしているのを見透かしてその姿を楽しんでいるようにも見える小悪魔のようなメリー。

麻子からは、おそらくメリーの最後の言葉は聞こえはしなかっただろう。

先ほどと同じように、俺の首に巻きついてじゃれているようにしか映らない。

 

しかし、俺はメリーの言葉に違和感を感じていた。

・・・・・あなたの口から・・・・・

俺以外の誰かから、俺が何故メリーを呼んだのか、そしてメリーをどうしたいのか、それを聞いたというのだろうか?・・・・・ならば、一体誰から?

 

俺は、背後から俺の頭にあごを乗せているメリーをヒョッイと持ち上げて俺の目の前に移動させた。息を呑む・・・。ニコニコとしているのは変わらない。しかし、俺よりも優位にたっているような余裕を持った笑顔。

「どうしたの?」

メリーは、首をかしげる。すべてを見透かされているような錯覚に陥る。

それなのに、また新たなメリーの魅力を見せ付けられたようで、このコケティッシュな小悪魔にどきどきとしていた。急に抱きしめたくなるキキキ。しかし、メリーの肩越しに見える麻子の顔のおかげでその衝動を何とか抑えた。

「なんでもないキキキ

何とか言葉をひねりだすと、メリーを開放した。

「さあ、お姉さんが待ってるよ」
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本当のこと5

開放されたメリーは、またしても俺の背後を陣取る。俺は胡坐をかいて座った状態で、メリーはひざを立てた状態で俺の首に腕を回し、顔を耳の辺りの持ってくる。

確かに、麻子は待っていた。俺が麻子に向かって話を始めるのを。やはりキキキ顔をゆがめながらキキキ

 

「麻子キキキ

麻子は、俺の言葉で、何とか変なものを見るような顔をもとへと戻した。

「麻子キキキメリーが話していいと言うから、話す」

俺はできるだけまじめな顔で、話し始めた。

「この子が何故ここにいるのか。そしてこの子が何者なのか・・・・・」

俺の真剣な表情を見て、麻子は麻子なりにただ事ではないと感じたのか、座りなおして身を乗り出してきた。

「この子は・・・。メリーは、この世のものではない」

できるだけ、真剣な顔でそう言い放った。

「はあ?」

もとより簡単に受け入れてもらえるとは思っていなかった。しかし、もう少し反応の仕方がある

だろう。眉間にしわを寄せて、明らかな攻撃態勢に入ろうとする。

「ちょっと待て、話を最後まで聞け」

麻子は俺をにらみながらチラッとメリーの方を見る。

メリーはおそらく先ほどと同じようにニコニコとして麻子を見ていたんだろう。俺のところから

はメリーの表情は見えないが、麻子の表情が落ち着いたのを見ると、そんな気がした。

「お姉さん、短気はだめよ」

メリーの言葉に、眉毛が反応している。が、ここはお姉さんの威厳を保たせるほうに力を注いだ

らしい。目を閉じ、大きな深呼吸の後。

「わかりました。さあ、続きを話して」

このようなやり取りにどぎまぎしながら、

「ああ、続きだなキキキ

俺は、都市伝説「メリーさんの電話」の話をした。そしてインターネット上にメリーさんの伝説

を取り扱う掲示板やそのまとめサイトが存在し、メリーを召喚する方法について研究していたも

のがいたこと。その管理人と名乗る人間が、メリーの召喚に成功したらしいこと。

「・・・・・まじめにいってるの?」

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本当のこと6

麻子はもともとそういうことを信じない。しかし、俺の真剣な態度にまったくの嘘とも思ってい

ないようだ。何かにだまされている。そう感じているのかも知れなかった。

「麻子、今携帯持ってるか?」

「携帯・・・あるわよ・・・」

「メリーいいか?」

俺は少し首を傾けて、メリーの方を見た。

メリーは退屈していたのか。自分の鼻を俺の耳にこすり付けて遊んでいた。あまりの心地よさに

顔がにやけそうだったが、ここでにやけてしまったら、もともこもない、麻子に信じてもらうど

ころか確実に亡き者にされていただろう。俺はそれがどんなに心地よかろうと真剣な顔をし続け

なければならなかった。メリーは俺のそんな過酷な状況をわかっていてこんなにも気もちのよい

ことを続けていたのだろうか?無邪気に知らず知らずにやっているのだと信じたいキキキ

「え?うん、いいよ」

俺の方に体重をかけて立ち上がる。立ち上がりざまに・・・なんて事をするんだ・・・。

俺の耳をカプッって一噛みしていきやがった。なんともキキキきもちいいキキキ

一瞬ぶるっと震えたが、俺は平静を装いながら、麻子に言った。

「その携帯のカメラで、メリーを撮影してみな」

メリーは、俺の横に立った。スレンダーな身体が白いワンピースからすっと伸びていた。

麻子は、そんなメリーと俺、そして携帯を見比べていた。

「いいよ。お姉さん、撮ったらわかるわ。この人が言っていたことが本当だって」

そういいながら、俺の頭の手のひらを乗せるキキキ。子ども扱いですか?まったくキキキ

と頭に手を置かれたままメリーの方を向こうとして、一瞬にして固まる。

・・・・・このワンピース・・・袖口キキキノースリープの上に広いキキキ

必死になって目をつぶる。見ちゃいけないキキキ。確かに、夢の中キキキいや、黒いものの見せ

た妄想の中では俺はメリーを抱いたけども、それはあくまでも申そうであって、現実のメリーは、

そんなことを思っちゃいけないくらいそのキキキなんだキキキキ俺がけがしちゃいけないんであっ

キキキキとにかくキキキそのなんだぁキキキキキガシン!
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本当のこと7

・・・・・ガシン??

目を開けた。ものすごい衝撃が顔にあって。今俺の視界には天井しか見えていない。

ふと顔を上げると、麻子が蹴りの体制のまま止まっていた。

「ちょっと、お姉さん!なんてことするのよ!」

と俺の方に駆け寄り、俺を庇う体制をとるメリー。ありがとうありがとう。涙が出た。

「お姉さん!私のこと大切にするって言ったよね」

言葉尻でにらみを利かせるメリー。

「だったら!この人も大切にして!」

メリーは、麻子に立ち向かうつもりだ。なんというキキキ

麻子は俺の目線に気がついたのだろう。昔からそういう部分には潔癖症的な部分があって、男の

いやらしさについては許せないような部分があった。

メリーすまないキキキ。俺はキキキ俺はキキキ麻子の思っているとおりキキキ。お前のすらっと

伸びた二の腕の向こう、大きく開いた袖口の中、輝くような素肌を・・・・見てはいないが見たいと

思ってしまったよキキキ。それなのに、お前はこんな俺を庇ってくれるんだねキキキ

俺がゆっくりと起き上がると、麻子はメリーを引っ張り、俺から引き離した。

「何言ってるの!メリーちゃん、こいつったら、そのいやらしい目でキキキ

そこからは俺に聞こえなかった。麻子はメリーの耳元でこそこそっとささやいたようだったキキキ

「えー!本当ですかぁ?」

「そうよ!このスケベ!」

「うわキキキさいてぇー」

キキキそうですとも、何とでも言ってくれキキキ

チラッとメリーを見るキキキ。サイテーなんていいながら、目が笑っていた。キキキからかって

いる?本当に最低だと思って、嫌悪しているような雰囲気ではない。麻子にはそのメリーの表情

が見えないのだろうか?あきらかに俺を困らせて、俺がメリーにすがっていくことを期待してい

るような目。

「男はね、けだものなのよ。いい人ぶってても、いくら大切にしてあげるって言っても、言うこ

とを聞いちゃだめ」

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本当のこと8

麻子が、メリーに向き直って、説教を始めようとする。が、メリーの表情に気がついたようだ。

「メリーちゃん?」

いたずらっこが自分の好きな子を率先していじめているような顔。どう感情を表現していいかわ

からなくって、相手の反応を見ている感じ。照れくさそうに、でも、俺が逆切れなんかしないと

確信している。俺がメリーのほれていることを絶対的に信じている。そんな表情。

麻子にも俺と同じようにメリーの表情が写ったのだろうか?

「メリーちゃん?わかってる?男ってキキキ

それでも引っ込みがつかず、メリーに話しかけようとして、

「わかってるよ。でも、この人は、私を大切にしてくれる」

と麻子に本当に素直な笑顔を返した。

「え?」

俺に近づいてくるメリー。ひざを伸ばし、両手を後ろに伸ばして上体を何とか起こした俺の前に

立ち、そのまま前から抱きついてくる。

座ったまま抱っこしているような形で俺に腕を絡めたメリーは、

「いじめちゃった。テヘッ」

と耳元でささやいた。テヘッってキキキキ

「ちょっと!メリーちゃん!」

麻子が叫ぶ。メリーは麻子の方を向く。

「お姉さん、大丈夫、あたしね、大切にしてあげるという言葉に弱いんだと思う」

「え?」

メリーはキキキ気づいていたのか?自分の中のスイッチについて。

「だから、お姉さんに、最初大切にしてあげるって言われたとき、自分で何をしてるのかわから

なくなったの」

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本当のこと9

メリーは、俺の太ももの上に座ったまま身体を反転させ、麻子の方をむいた。

さらに俺に手を出せといっている。俺は少し身体を起こして、メリーに手を差し出した。

「自分でも何をしてるのかわからない状態になったの」

麻子はきょとんとした表情のまま、メリーを見ていた。

「私ね、大切にされなかった。本当にキキキ

メリーは、俺の手を片方づつ手に取り、自分の身体の前の部分に持っていく。

「大切にしない人を殺してしまうほどに、大切に扱われることにあこがれていた」

まるで俺がメリーを後ろから抱きすくめているような格好にキキキ

「けど、私にそんな日が訪れる事なんかないとそう思っていた」

メリーは麻子に向かってなのか、それとも背後にいる俺に向かってなのか、淡々と言葉をつむいでいった。

「だから、同じようなものたちの思いを動ける私が叶えてあげることが、私自身の救いだった」

そうだ。メリーの救いキキキそれは大切にされない存在の中で唯一自由に動ける存在である自分

の存在理由。そこに自分の居場所を作り上げることで、ようやく保っていた魂の安定。

「彼が言っていたことは、本当。」

メリーはかすかに俺のほうを見ながら、よりいっそう腕を引き寄せた。もはや完全にメリーを抱

きすくめるような形になって、ようやくメリーがかすかに震えているのがわかった。

「私が、都市伝説の中に出てくるメリーさんの電話のメリー」

つらいのか?自分の存在を語ることが?

「ある女の子が大切にせずにぼろぼろにされて捨てられた人形」

悲しいのか?自分の過去を思い出すことが?

「そして、ひどい仕打ちの末にぼろぼろになって捨てられた人間の女の子」

それとも、怖いのか?この世のものではないと否定されることがキキキ

「私の中には2つの魂がある。そのどちらもが、ぼろぼろにされたものの恨みでできている」

怖がらなくていい。俺がここにいる。そう伝えたくて、本の少しだが、俺は腕に力を込めた。

「恨んでばかりの魂を取り込んでいるような感じ。モノの恨みが自然と集まってきて、癒される

のを待っている。だからね、できるだけ怖がらせるの」

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本当のこと10

メリーは俺が腕にこめた力に反応して、少し背筋を伸ばした。

「だんだん近くに行くよって知らせながら、人がモノになってしまうことを想像させるの」

そうだ、何もおびえる必要なんかない。俺はお前にひどいことなんかしない!もう二度と、魂を

けづりながら、鎌を振るうことなどしなくてもいいんだ。俺は心の中でつぶやいた。

「そうすることで、私は自分の中の黒いものを何とか沈めてきたの」

黒いものキキキメリーの中にもあの恐ろしい黒いものがあるというのかキキキキキ

「モノたちの恨みを癒していくことで、自分の中の激しい衝動を沈めてきた」

鎌から俺の中に流れ込み、俺に恐ろしいほどの衝動を感じさせ、また俺に長い長い妄想を夢見さ

せた黒いもの。俺はこれからの将来、自分の願望とともに人生一回分の長い妄想を味わった。

そうだ、俺は妄想の中でメリーを置き去りにして一度死んだ。悲しみにくれたメリーが、再び

鎌を手にしなければならないほどに。一度味わってしまった安らぎは失ったときにその大きさを知るのだ。

しかし、俺は戻ってきた。黒いものに抵抗し、メリーを本当に大切にしてやるのだと誓って。

「けどね、もう大丈夫」

メリーは、少し節目がちだった目をまっすぐに麻子に向けた。

「この人がね、本当に大切にされるって言うのはどういうことなのかを教えてくれたから」

は?キキキキキ。俺はそんなこと、まだ教えてやれてない。少なくとも、メリーに直接自分の思いの

すべてを告げたことはないだろう。

「大切にしないものを追いかけてばかりいたら、私も大切にしないものと同じ。黒いものを沈めて

も、結局黒いものに操られているんだと思う」

俺の手を握る手に力がこもった。これはメリーの宣戦布告だ。あの黒いもの、鎌への宣戦布告だ。

「だから、私はもう操られない。お人形じゃない!」

ベットのしたからでも、少しでも俺が弱ると俺の心の罠を仕掛けてこようとするほどの力を持つ鎌に

戦いを挑んでいるのだ。俺は力を込めたメリーの手を支えるように握り返した。

「そんなものに屈しなくてもいいような強い魂があることを知ったの」

そしてキキキキメリーは、首だけ後ろを振り向き、言った

「今度は、交通事故でなんか死なせないよ」
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本当のこと11

メリーの目はとても優しかった。

そしてその表情をすごく懐かしく感じた。

 

キキキ交通事故キキキ

メリーの言葉に反応したのは、意外にも麻子のほうだった。

「どういうこと?交通事故って?」

 

メリーは、目だけで麻子の動きを制した。

俺は、メリーの優しい目とそして自分の中でめぐっているあの記憶キキキ家を出たとたんに、交通事

故に会い、病院に運び込まれた記憶キキキそれは黒いものが俺の願望を使って見せた妄想の中での自

分の最後。妄想とはいえ、しっかりとした時間の感覚があった。そして交通事故の際の痛みは現実そ

のままだった。キキキあの記憶が頭の中をめぐっていた。

 

俺は混乱する頭を整理しようと、首を横に何度も振った。

メリーは一度立ち上がり、麻子に少し待っていて欲しいとちいさな声で言った。その後すぐに俺の方

に向きなおり、すとんと太ももの上に座った。

 

俺の肩に手を置き、まっすぐに俺を見た。

俺はまだ混乱していた。あれはキキキあの妄想は、メリーとともにすごした時間は、単なる妄想で、

黒いものが見せたもので、何故キキキキ

なぜキキキメリーが知っているキキキ

 

「あの時は、ごめんなさい」

メリーが俺をまっすぐ見つめながら、本当に優しい顔をした。

この顔キキキこの表情キキキそうだ、メリーの何かが違うと感じていたのは、この表情だ。

自信ありげで、そのくせやさしい。

ほんの少し前、少なくとも、この今着ている白いワンピースに着替える頃には、見せたこともない

表情。なのに俺は懐かしく感じていた。つい最近なのに、遠い昔に見たような感覚が俺の中にあった。

posted by 126 at 08:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 第六の情景「本当のこと」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

本当のこと12

「最後まであなたを信じることができなかった」

メリーの表情が曇るキキキ。申し訳なさそうにキキキ

違った、なにもかもが違った。心の壁がまったくない。俺を信じきっている。それは本当に懐かしい

感覚だった。

 

「でも、わかったよ。あなたがどれだけ私のためにだけ生きて、そして死んだのか」

メリーは微笑んだ。その目にはうっすらと涙が光っている。俺は何もいえなかったただ、まだ混乱して

回り続けている頭の中と、そして、目の前のメリーの可憐さに別の意味でくらくらしていた。

 

「死んじゃったのに、痛くて苦しくてつらかったのに、自分の痛みだけを受けていたら楽だったのに、

そのまま死んで行けたのにキキキ

メリーのほほに涙が伝っていく。しかし、その表情は泣き顔なんかじゃない。いとおしいものを見る

ように目を少し細めて口元には微笑みを残した

 

「それなのにキキキ私のところに来てくれたんだよね」

妄想が、再び走り始めた。俺の中で、死に逝くものが見るという走馬灯。それと同じ速さでキキキ

「聞こえたよ。あなたの声。ちゃんとキキキ聞こえたよ」

最初から、すべてを、妄想の時間のすべてを、光の速さ追いかけていた。

「ありがとうキキキね」

そのとき光がはじけた!キキキキそうかキキキキ。俺はあの時妄想を見ていたんじゃないんだ。

俺は、妄想の中にいたんだ。

 

俺は漠然と頭の中に浮かんできた言葉をそのまま口にした。

すべてを理解できたわけじゃない。しかし、俺は、こういうしかなかった。

「そうか、メリーもキキキあそこにいたのかキキキ

 

俺の中の混乱は、ゆっくりと収まっていった。頭がすっきりしていくのと同時に胸が熱くなってくるの

がわかった。

ヤバイキキキ。なきそうだ。もう二度と会えないと思っていたものに会えたような錯覚。

いや、実際に俺は一度あの妄想の中で、人生を一回分メリーとともに過ごし、そして、死んだ。

メリーはじっと俺の方を見ていた。そして、微笑みながら、うなづいた。

そうなんだ。俺は、自分の思いが伝わらぬまま死んで行った。死んでなお、メリーの事を見守るような

存在として、メリーのすぐそばに飛んでキキキ

メリーキキキ。本当の今ここにいるメリーが、俺の愛したメリーが、俺の手の届くところにいる。

俺の視界が、ゆがんでいた。泣くまいと思っても、どんどんとあふれ出す涙。

ぼやけた視界の向こうでメリーが動く。俺の太ももが軽くなる。

どうやらメリーが立ち上がったみたいだ。

ふわっキキキ

一瞬にして何かに包まれた。白くてやわらかい感触キキキ

「本当にありがとう。もうね、知ってるの。あなたが何故私を呼んだのか、私を呼ばなければ成らなか

ったのか。そして、どうしたかったのか。」

俺は、この小さな少女に包まれて抱かれていることに、とてつもない安心感を感じていた。

「だからね、本当は無理して言わなくてもいいんだよ。でもキキキ

俺の頭の上にメリーのほっぺたがピトッと乗っかってくる。

「でもねキキキ。何回でも聞きたいんだよ。あなたの優しい言葉、とてもキキキうれしい言葉」

俺は大きく息を吸い込んだ。何度でも聞かせてやるよ。

そうだ、俺はそのためにあの妄想の中から戻ってきたんだ。

黒いものに操られないために、

やつの思い通りになんかさせないために、

メリーを大切にしてやるために、

それが当たり前だと、当たり前のことなんだと、メリーに伝えるためにキキキ

「メリーキキキ

俺は、メリーの腕に抱かれたまま、言った。

「メリー、大好きだ」

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本当のこと13

俺がメリーの胸でつぶやいた言葉。メリーはその言葉に反応して、俺の頭を強く抱きしめる。

俺はメリーに包まれている感覚の中で本当に温かいものが心に待たされていくのを感じていた。

大きく息を吸い込むとメリーの香りが体を満たしていく。懐かしい香りだった。

 

「今度は、簡単に死なせない。もしも、あなたが死ぬようなことがあっても、もう二度と鎌を手にしたりはしない」

メリーは俺を抱きしめながら、俺の頭に唇が触れるかどうかのところで言った。

 

俺はゆっくりと顔を上げる。メリーの美しく整った顔がすぐそばにあった。やさしく、目を細めて微笑んでいる。その目はゆっくりと閉じていった。俺もまたゆっくりと目を閉じ・・・・横からの激しい衝撃を感じていた・・・。

衝撃?・・・・目を開けると、目の前にメリーの美しい顔はなく、天井と仁王立ちの・・・麻子。

「えーい!うっとおしいわ!私の前でいちゃつくな!」

仁王立ちどころか、仁王様の顔で俺を見下している麻子。

「さっきから黙って聞いてりゃ、わけのわからないことばっかり言って、いちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃと!!!」

「いや、麻子?別にいちゃついてるわけではなくって、その・・・なんだ・・・本当のことを・・・」

「何が本当のことだぁ?真剣に聞いてりゃ、都市伝説だぁ?黒いものだぁ?ふざけんのもいい加減にしてよね!」

「いやだから、本当に、メリーは・・・」

ボルテージの上がりまくった麻子には何を言っても通じそうになかった。

完全に目の前の俺を完膚なきまでに打ちのめさないとおそらくはこの怒りは静まらないだろう・・・。

潔癖症な麻子にとっては、刺激の強いものだったのかも知れない。なにせ、付き合っているときでも、手をつないだのがもっとも勇気ある行動だったのだから・・・。

「お姉さん、まって!」

怒れる猛牛のような麻子の背後から、声をかけるものが・・・ってメリー・・・。

ほうきを持って、麻子に負けず仁王立ちで部屋の真ん中で麻子をにらみつけている。

「彼をいじめるなら、容赦しないんだから!」

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本当のこと14

下唇をきゅっと噛み、上目使いでにらみを利かせる姿。少し前の恐ろしいまでに冷酷なメリーとは似ても似つかない。普通の女の子がすねて怒っているようなそんなかわいさすら感じてしまう。

「ほう、容赦しないって、どうするの?」

背中でメリーの気配を感じ取りながら微妙な間合いを取り、台詞が終わると同時に背後のメリーに向かって後ろ蹴りをかまそうとする。しかし、メリーもその動きを読んでいたのか、ひらりと右へかわし、けりだされた麻子の右足を跳ね除ける。片足で経っている麻子はバランスを崩しそうなものだが、跳ね除けられた右足のそのままの勢いで床につけ、先ほどまで軸足だった左足でメリーの背後からけりを送り出す。ここでメリーのかわいい顔も真剣な表情に変わった。冷酷ではないにせよ、あどけない表情が影を潜め、真剣なまなざしへと変化していた。麻子の左足のけりをほうきで受け止める。しかし、ほうきはあっけなく折れ、メリーの左肩辺りに麻子のけりが決まった!

「メリー!」

俺は、麻子とメリーの間に割り込もうとした。しかし、よく見ると、メリーはわきの下からまわした右手で麻子の左足をつかんでいた。

麻子の表情が怒りから驚きに変わっていた。

「あなた・・・なにもの?」

ようやく少し冷静になってきたのか、それとも、男の格闘家とも渡り歩けるほどの自分の技を受け止めたこの美しい少女に興味を持ったのか、攻撃態勢を解いた。

「メリー。都市伝説で有名なメリーさんの電話のね」

片ひざをついたまま、麻子を見上げ、麻子の左足を解放しながら、メリーは言った。

かっこよかった。よくこんな柔軟な動きをするメリーの振り返りざまの一撃を交わすことができたものだと、自分でも震えがきていた。いや、それよりも何よりも、強いメリーのかっこよさに惚れ直していた。純粋な笑顔も、線の細いか弱そうな部分も、コケティッシュでいたずらな目線も好きだが、勝気で負けを知らない強い視線は、見るものをしびれさせる。

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本当のこと15

「め、メリー!」

俺はメリーのもとへと駆け寄ろうとした。そうだ、お約束だ!俺はメリーを抱きしめて、メリーは「テヘッ☆無茶しちゃった・・・」とか言うんだよ!うんうん。

しかし、メリーに向かって一直線の俺はその前の麻子の後ろ蹴りでまたもや沈んだ!

俺に無情なけりをかましてきた麻子は

「すごーい!こんなにかわいいのに、こんなに強いなんて・・・」

とメリーを抱きしめて独占していた・・・。おそらく、完全に抱きすくめられているメリーには、麻子の後ろ蹴りが俺に炸裂して、俺が沈んでいることなど知る由もない・・・。

 

「・・・ま、というわけで、この子は預かっていくからね」

すっかり麻子に気に入られたメリーは、麻子に羽交い絞めにされて、無理やり連れ去られそうになっていた。メリーをこんな汚らわしい男の部屋においておくわけには行かない!とか、私の妹分として、私の技のすべてを教えるとか・・・。

「夜はね、うちに来なさい。汚らわしいとかは冗談だけど、あなただって女の子なんですから!」

と古風な面を見せる麻子に、メリーもしぶしぶ了承した。

「明日の朝には、また来るからね」

という言葉とともに、メリーは連れ去られていった。正直なところ、メリーも麻子の人柄が見えたのかも知れない。本当にメリーをかわいがろうとする様子が俺にも伝わってきた。幽霊であれ妖怪であれ、自分の気に入ったものには全力で力を注ぐのが麻子だ。

麻子になら、メリーを預けても大丈夫だ。そう言い聞かせながら、ぽつんと一人で残された部屋ががらんとしてだだぴろい感じがした。

posted by 126 at 08:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 第六の情景「本当のこと」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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