2007年01月05日

メリー衝突4

「よそ見をしている暇はありませんわよ」

紫のメリーは、真横に鎌を滑らせていく。俺のメリーにめがけて。

俺は、飛び起きて走った。もちろん俺のメリーを助けるために・・・。

しかし、それには及ばなかった。俺のメリーはほうきを左手に持ちかえて、ほうきの枝で鎌の行く手を防いでいた。

カンとすんだ音が部屋の中に響いていた・・・。

鉄?ほうきの枝は鉄製じゃないか・・・。そんなものがもしも・・・脳天に直撃していたら・・・。

・・・紫のメリー・・・感謝・・・。

「なかなかやりますわね・・・」

第一打を防がれて動揺を隠せないようだが、それでも、本来が負けず嫌いなのか、負け惜しみを口にする。

俺は、いそいで紫のメリーの鎌と俺のメリーのほうきをつかんだ。

「まて!二人とも・・・誤解だ!メリー!この子は・・・そのなんだ・・・お前の考えているようなんじゃない!」

まずはメリーの誤解・・・。おそらくはメリーが変えた後に女の子を連れ込んで・・・。というものだろうと想像できる・・・

いや普通はそう考えるだろう。それをとかないと話が始まらない。

「私が、何を考えているって言うんですか?」

だめだ・・・。また怒りがぶり返してきたみたいだ・・・。

「いや、その、なんだ・・・俺はこの子に何もしてないし・・・第一この子は俺を殺しに来たんであって、この子もメリーだっていうんだ・・・」

「・・・・・そうですか・・・私に飽き足らず、ほかのメリーまで召還して・・・」

俺の手からほうきを抜き去る。

「そんなに女の子に囲まれたいんですか?」

そして大きく振り上げ、

「いったいあと何人召還したの?」

振り下ろす・・・。

カン・・・。

すんだ音が部屋に響く・・・。

紫のメリーの鎌がほうきを防いでいる。

「あなたが黒のメリーですの?」

紫のメリーが落ち着いた声で言った。

posted by 126 at 09:58| Comment(0) | TrackBack(0) | 第八の情景「メリー衝突」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー衝突3

「麻子お姉さんが・・・男はね・・・簡単に信じちゃだめだって・・・」

うつむき加減で前髪がたれていて顔の表情が見えない。

「あたし、そんな麻子お姉さんに、必死で・・・あの人は大丈夫って・・・」

な、ないているのか?

鍵は閉まっていたはずだ。なのにどうやって中に入ってきたのか・・・。

「そう説明してきたのに・・・」

メリーはほうきを振りかざした。そして顔を上げる。ないてはいない・・・。しかし、その表情は・・・。

完全に怒っていた。

「うそつきぃ!」

ほうきが振り下ろされる・・・。

ほうきならいいかな・・・少々痛くても・・・。

それでメリーの怒りがおさまるのであれば・・・。

そんなことを思っていた。

しかし振り下ろされたほうきは俺の体を直撃することはなかった。

「まったく・・・うるさくっておちおち寝てられやしませんわ」

背後で声がした。俺はゆっくりと振り返った。下着姿のまま俺の枕でほうきの行く手を阻んでいる紫のメリーが俺の頭上にいた。

「この方に危害を加えることはわたくしがゆるしませんわ」

まっすぐ俺のメリーに向かって視線を送っている紫のメリー。その表情は不適にも挑発的で、昨日俺のところに始めて現れたときと同じものだった。

 

「・・・あなた・・・だれ?」

メリー・・・俺のメリーも視線を俺から俺の背後の紫のメリーに向ける。表情はすっかりと攻撃態勢に変わっている。

 

「誰でもいいですわ。この方にこれ以上危害を加えようとするのなら・・・」

枕で抑えていたほうきをはじき返し、

「私が相手になりますわ」

そう言い放つと、床へと転がり出る。

 

黒のメリー・・・俺のメリーもほうきを器用に空中で持ち直し、紫のメリーの転がり出た方向に向かって歩み出た。

紫のメリーの転がった先は、クローゼットの前。

そこには彼女の武器である鎌が昨日のままで放置されていた。

紫のメリーは、自分の鎌を構える。

「何者かはわかりませんが、突然現れて、私の大事な人に危害を加えるなんて、とても許されたもんじゃありませんわ」

 

大事な人?おい・・・いつからそうなったんだ?

その言葉を聞いて、俺のメリーは、キッと俺のほうを振り向き・・・無言でにらみを・・・。

どういうこと?

と、問い詰められている感覚だ。しかし、俺にもそのあたりはまったくわからないわけで・・・。

 

posted by 126 at 09:57| Comment(0) | TrackBack(0) | 第八の情景「メリー衝突」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー衝突2

「どわー」

あまりにもあんまりの・・・その何だ・・・展開に、俺はあせった。

このまま踏み込まれたら、まったく何の言い訳も通用しない・・・・。

「ちょ、ちょっと、ま、まって・・・き・・・そうそう着替え中だぁ」

と苦し紛れの言い訳を声を裏返しながらやってみる。

玄関の鍵・・・。大丈夫だ・・・鍵はかかっている。

「わ、わかった・・・早く・・・その・・・着替えてね・・・」

着替え中という言葉にどぎまぎしているのか、メリーの声もうわずっていた。

今の間に・・・ってどうすればいいんだ?

俺から引き離したとしても、この紫のメリーがいるという状況・・・。

しかも下着姿で、眠っているという状況には変わりはない・・・。

「すいません・・・あの・・・起きてください」

外のメリーには聞こえない声で、紫のメリーを起こそうとした。

しかし、むにゃむにゃ言うだけで起きる気配がない・・・。

とりあえず、紫のメリーを抱きかかえ、ベッドに移す。

服・・・服さえ着ていればまだ・・・その・・・なんだ・・・言い訳は出来るだろう・・・。

ってなんで俺が言い訳をしなければいけないんだ?

そうだ・・・とにかく服を着せよう!

俺はベッドの上にきちんとたたまれている服を広げて・・・・。

どうなっているんだ?この服は・・・。

気持ちだけが焦るが、なんとも複雑な服の構造にお手上げ状態だった。

目の前に下着姿の少女・・・その子の洋服を手にして悩む姿を見てしまったら、俺のメリーはなんと言うだろう・・・。

『何してるんですか?』

って怒るんだろうか?それとも・・・。

カタッ・・・。

背後で物音がした。

俺はゆっくりと振り返った。

そこには・・・俺のメリー・・・黒のメリーが・・・特大のほうきを手に持ってたっていた・・・。

 

posted by 126 at 09:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 第八の情景「メリー衝突」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メリー衝突1

・・・・・・窓から差し込む明るい日差しで朝だと言うのはわかった。

しかし、身体の節々が痛くて、満足に動かすことができない。目を開けることすら、満足にできなかった。

ゆっくりと、がんばって目を開ける。目の前には天井が見えた。

・・・そうか・・・俺はベッドにもたれかかるように寝ていたつもりが、床に崩れ落ちたわけだ・・・。

親父の真似・・・朝、目が覚めるときに手をつないでいてやるって・・・難しいものだな・・・。

俺の手は、紫のメリーの手を握ってはいなかった。しかも、誰がかけたのか、ご丁寧に掛け布団をかけられて、きちんと仰向けで寝ている。

俺は改めて親父はすごかったんだと思った。眠ってしまったら、手をつなぎ続けておくことなどできはしない。もしかすると、親父は、俺が不安になるたびに、徹夜をしていたのかも知れない・・・。

そんなことを思いながら、ベッドの上を確認しようとした。

少し頭が働いてきている。もう、ベッドの上にはおそらくは誰もいないだろう。

俺に掛け布団をかけているという事は、紫のメリーが起きて、俺に布団をかけて出て行ったんだろう。

そんなことを思いながら身体を起こそうとした・・・。

・・・・・重い・・・。

身体が・・・重い・・・。

昨日黒い鎌に身体をのっとられ人間にはあるまじき運動神経を駆使した後遺症で、筋肉痛はある。

それで、身体が動かない・・・・のではない。

・・・・何かが乗っている・・・。俺は半分身体を起こそうとして、あきらめ、掛け布団をはいだ!

「・・・ん・・ううん・・」

俺の上には・・・。

紫のメリーが抱きつくようにのっかかっていた・・・。かわいい薄紫のリボンのあしらわれた白の下着姿で・・・。

「ど!!」

・・・あ、足を絡めてくるんじゃない・・・。

俺は、深呼吸をした。とにかく落ち着こう・・・。

「メリーさん・・・紫の・・・メリーさん・・・朝ですよ・・・」

と間抜けな声で声をかけてみたが、紫のメリーは幸せそうな顔でむにゃむにゃ言っている・・・。

俺は、彼女の身体に触れないように、ゆっくりと身体をずらしてみたが、少しでも離れようとすると、不機嫌そうな顔で、余計に俺を引き寄せて、さらには足が絡んでくる・・・。

「ちょっと・・・おきろよ!」

と少し大きな声を出してみた。

すると、紫のメリーは、薄く目を開けて、至近距離にある俺の顔を見て、うんうんと二度うなづいて俺の胸に顔をこすり付けるようにさらに寝息を立て始める・・・・。

・・・な、何が「うんうん」なんだぁぁ!

・・・こいつ、何を納得してさらに眠りについているんだ?

俺はあせりながらも、そのなんだ・・・やわらかいな・・・とか不謹慎な気持ちを必死で頭から追い出していた。

そのときだった・・・。ピンポーーーン。とチャイムの音がなり、つづいて、

「起きてる?」

とメリー・・・俺のメリーの声がドア越しに聞こえてきたのは・・・。

posted by 126 at 09:55| Comment(0) | TrackBack(0) | 第八の情景「メリー衝突」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紫20

「もう、大丈夫だからな」

そういって、二カッと笑った。色黒で真っ白な歯が印象的だった。しかし、俺は笑うことも、うなづくことも

できなかった。大丈夫という言葉が何を意味するものなのかも、わからず、心を殺したまま、うつろな表

情で親父を眺めていた。

「目が死んでるな・・・」

親父はそういうと俺を抱き上げ、力いっぱい抱きしめた。何が起こっているのかわからなかった。

「人間はな、あったかいんだ。俺の心臓の音が聞こえるか?」

胸に押し付けられた耳に、わずかに親父の心臓の音が伝わってきた。俺はゆっくりと目をつぶった。

そのまま眠ってしまったんだろう。気がつくと、暖かい布団の上で俺は眠っていた。その傍らに親父がい

た。俺の手を硬く握り締めたまま自分は布団もかぶらずに、横になっていた。

身動きもせずに目だけ開けただけなのに、親父の目がカッと開いた。

「安心して眠れ。眠って、目が覚めても、俺がいてやる」

それだけ言って、また目をつぶった。

力強い言葉だった。握られた手からその言葉が本当なんだと思えた。目を覚ましても誰もいない。そんな毎日を過ごしていた俺はそこで初めて涙をこぼした。

おそらく、親父は俺が泣いていることに気がついていただろう。しかし、目を開けることもせず、少し・・・ほんの少し握った手に力を込めただけだった。

安心できた。それだけなのに、俺はものすごく安心できた。ここにいてもいいのだと。この人はそばにい

てくれるのだと。そう思えた。

それからも、何度も何度も、俺は、昔の事を思い返して、夜中に目が覚めることがあった。そのときには、

親父が必ず、布団の横で俺が眠るまで手をつないでいてくれた。

そしてそんな日は、必ず朝、目が覚めるまで親父は手を離さずにそこにいてくれた。

 

俺は紫のメリーを見ながらそんな昔の事を思い返していた。

・・・親父の真似でもしてやるか。

俺は、紫のメリーの手を握ったまま、ベッドに背を向けてもたれかかった。目の前の床に放置されたままの黒い鎌。毛布でくるんで片付けようと思っていたんだが、そのままにした。

目をゆっくりと閉じた。

メリーは・・・俺のメリーは眠ったのかな?

俺は少しにやつきながら、深く息を吐き出した。そして、そのまま、眠りについた・・・。

頭の片隅に、何か引っかかるものがあったが、もう、すでに思考能力は低下していた・・・。

posted by 126 at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | 第七の情景「紫」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紫19

「・・・ん・・うぅ・・んん・・」

振り返った先、俺のベッドに眠る紫のメリーは、汗をかいて、うなされていた。

黒い鎌の夢でも見ているのだろうか?苦しそうな表情で顔をしかめていた。

俺は、布団から出ている紫のメリーの手を握った。

「怖かったろうな・・・確かに・・・」

俺は、思い返していた。鏡に映った自分の姿。俺であって俺ではない、黒い鎌にのっとられた獣のような

姿。目は真っ赤に充血し、口からはよだれがとめどなく滴り落ちていた。

「もう、大丈夫だからな・・・」

俺は眠っている紫のメリーにそっと声をかけた。

そういえば、俺も・・・こうしてよく手を握ってもらった。

俺は捨てられ、拾われた。ひどい虐待の後に、俺一人を残して消えた両親。その後に、毎日やってくる借

金取り。そいつらにひどい言葉をかけられ殴られる日々のなかで、俺をかばってくれた人がいた。

それが俺の今の親父だ。麻子の親父さんとは友人だというが、いまだに、謎の多い人で、1年の半分以

上は海外にいる。その親父が、俺の家に乗り込んできて、借金取りから俺を救い出した。

最初は、別の借金取りだと思った。それぐらい勢いよく無神経に借金取りの間に割り込み、奴らを殴り

倒し続けた。相手がもう立てなくなるほどにいため続けた。そして、最後に親父は言った。

「お前らがこの子に与えた苦痛は、この程度ではすまない。本当の苦痛というものを、おしえてやろうか?」

5人の借金取りは。立ち上がることすらできずにおびえていた。涙を流しながら首を横に振ることしかで

きなかった。

親父はゆっくりと俺の方に近づいてきて、手を握った。
posted by 126 at 09:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 第七の情景「紫」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紫18

「うぅ・・・ん?」

背後でうなされるような声がして、俺はゆっくりと振り返った。

俺の注意が俺の内面というか、脳のどこかでつながっているような感じの黒い鎌から離れたことで、頭

に響いていた黒い鎌の気配は消え去った。

・・・まあ、いいか・・・。

おれは、黒い鎌に聞きたいことが、まだまだたくさんある。このままでは、俺は、この紫のメリーのように

俺を狙う奴から逃げ惑わなければならない上に、もしも、俺がそいつらの手によって死を迎えてしまった

ら・・・。俺のメリーは、そいつらのしもべとして、扱われてしまうということだ。

魔物たちのしもべと言うのがどのような状態なのかわからないが、メリーに自由はなくなるということだ

ろう。メリーの笑顔を奪うことになるのだろう。そんな事は絶対になってはいけない。

なら、俺が・・・メリーの手にかかればいい・・・。ということなのだろうか?

メリーが望むのであればそれでもいいとも思う。もともと、そんなに生に執着しているほうではない。惰性

で生きている。それが自分の生き方についていえることだと思う。

死んでいないから、今、生きている。

日常の中で喜ぶことも、怒ることもあるが、取り立てて目的もないまま、ただ生きている。それがメリーを

知るまでの俺の行き方だ。

ただ、メリーを知ったときの焦燥感・・・。本当に俺はメリーに会いたいと思った。その情熱。メリーのため

になら、死んでいけると、俺は思う。しかし、俺が死んだ後、メリーが悲しみにくれ、再び鎌を手にのろい

の言葉を吐きながら、笑顔をはじけさせることもないようなことになるのであれば・・・。俺は死ねない。

そうだ、俺はメリーを大切に、そして幸せにしてやるんだ。安心して、些細な幸せを拾い集めることができ

るように・・・。そのためには、俺は死ぬわけにはいかない。

posted by 126 at 09:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 第七の情景「紫」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紫17

―――そうだーーー

俺は改めて、鎌の方を見た。もう何度も俺の頭の中で聞いた声。黒の鎌の意思が俺に語りかけているのを感じたからだ。

―――お前の考えたとおり、わしは黒のメリーをマスターとして選んだ。しかし、メリーがわしを拒み、わしを手に取らぬ限り、メリーはお前を殺す事はできぬ。

―――他のメリーがかぎつけてくるとは、しかもこんなにも早く・・・。

―――事情が変わってきた。お前に死なれ、わがマスターなるメリーが他のものの下僕となることだけは避けねばならぬ。

「それは、お前のマスターがメリーから俺を殺したものに変わるからか?」

―――わしのプライドもある。つまらぬ小物の魔物に使役されねばならぬのはたえられん。しかし・・・

「しかし?」

―――わしの選んだ・・・いや任された娘を下僕などにするわけにはいかぬ。

「任された?」

―――それはよい。お前は、命を狙われるものとなった。メリーを名乗るものだけではない。他にもわしの力を欲しがっておる魔物やアヤカシは数多くいるであろう。

 

・・・俺が、命を狙われる・・・。数多くの魔物に?

―――こうなれば、方法は3つ

―――1つ目の方法は、お前が自ら死を選ぶこと・・・

―――そうして、メリーを解放すれば、何も問題は生じない。メリーの中に更なる憎しみと悲しみが芽生

え、人外のものとしての成長を遂げる。

―――2つ目は、お前がメリーに変わり、このわしのマスターなること・・・

―――先ほどのわしを跳ね除けた心の力。アレを持っておれば、迫りくる小ぶりの魔物など敵ではない。な

にせ、このわしがついておる。

―――しかし、わしの望みは、お前が死すること。願わくばメリーの手にかかるか、メリーを絶望のふちに

陥れること。何よりもわしの望むのは、人としてのメリーの心を真っ黒にしてしまうことだ。

「そ、そんなこと!」

―――まあ、最後まで聞け。もしくは・・・・

俺は黙った。

―――メリーとお前の契約を解除させること・・・

「え?」

―――お前を殺さぬ限り、メリーは次の契約を結ぶ事はできぬ。つまり、別のものを刈りにいくと言う事

はできないということだ。

―――それゆえに、お前が狙われる。契約さえなくなってしまえば、獲物を横取りしようなどと思うものも

いなくなる。お前も安全で、メリーも誰かの下僕になる事はない。

「それだ!それはどうやるんだ?」

―――しらぬ・・・。

「は?」

―――一度交わした契約を解除したことがあったという話は聞いたことがあるが、もう何十年も前に一

度だけだ。それがどのように行われたのかはしらぬ。誰が知っているのかも、わからぬ。

 

「わからぬって・・・あんたが絡んでいたんじゃないのかよ!」

俺は紫のメリーが眠っていることも忘れて、叫んでいた。

posted by 126 at 09:51| Comment(0) | TrackBack(0) | 第七の情景「紫」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紫16

まず、床の上に放置された危険な代物を何とかしなければならない。

そうだ・・・黒の鎌・・・。

思い返してみると、この鎌はただの鎌ではない・・・。もともと俺のメリーを知ったきっかけになったメリー召喚のまとめサイト上にも、この鎌の事は、さまざまな仮説として書かれていた。

何者かが死んでいく不幸な少女与えた「死神の鎌」であるという説。

古代の大魔道師ヒ・ダールのもたらした道返しの剣が現在に伝わったものという説。

日本の古来の伝承に鎌の正体を求めるものもいて、その説は本当なのか書き込んだ人間の創作なのかわからなくなっていた。

その中に確かひとつ、奇妙な書き込みがあったのを思い出した。

その書き込みには、確かに「黒き鎌」と明記されていた。

俺は急いでパソコンを立ち上げた。現在はもう、インターネット上に存在しないまとめサイト。俺はそのサイトを自分で保存していた。「黒」「鎌」で検索をかける。出てきたのは4つ

『黒き鎌は、紅毛の地より渡り、多くのものを惑わし、特別なる修行を行いし仙人を持ってしても使役する事は叶わず』

『黒き鎌は、人心を惑わし、人心を麻痺させ、人心を食らう。』

『メリーの持つ鎌は、黒き鎌と呼ばれるもので、人形であるメリーにしか扱えない。人間の心を持つものが使おうとすると、心を蝕まれる』

そして・・・。

『黒き鎌は、最強にして、意思をもち、自らの持ち主を選ぶ・・・』

 

「・・・持ち主を・・・選ぶ・・・」

紫のメリーとの戦いのさなか、黒の鎌が行っていた言葉・・・。

『黒のメリーが契約をした獲物を横取りし、自分の下僕にしようとしている』

『最強の鎌といわれる黒の鎌の力。このわしのマスターになる』

 

つまりは、黒のメリーが契約した獲物というのが俺なわけだ・・・。俺がメリー・・・俺のメリーに殺されるの

ではなく、他の・・・他にいるのかどうかわからないが、何者かに殺されでもしたら、俺のメリーはそのもの

の下僕となる。そして、メリーを持ち主として選んだ黒の鎌の所有者となるということか・・・。

posted by 126 at 09:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 第七の情景「紫」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

紫15

「なんだって、俺が・・・」

と愚痴ろうとしたとき、また、紫のメリーが顔を出す。

今度は真っ赤な顔をしている。

よく見ると、布団のすそから手が出ている。

「なんだ?」

と聞くとまた、布団の中に顔をうずめて、ぼそぼそとした声で何かを言った。

「聞こえないよ」

何を言っているのかまったく聞こえなかった。

「・・・怖いから・・・手を・・・つないでい・・・て・・・ください・・・」

・・・・・。

紫のメリーの高慢な態度からは想像できないしおらしい言葉が、かすれながら細々と聞こえてきた。

あまりの事に俺は、「は?」と聞き返してしまった。

すると、ガバッと布団をはいで、やはり真っ赤な顔をした紫のメリーが起き上がった。

「・・・な、何回も言わせないでほしいのですわ!は、はずかしい・・・んだから!」

・・・・・。

起き上がった紫のメリーは・・・洋服を着ていない。かわいい下着姿で、俺の前に座っていた・・・・。

「・・・・・」

俺は何も言えずに固まっていた。

そんな俺の姿でわれに返ったのか・・・。紫のメリーは、急いで布団の中へともぐりこんだ。

「も、もういいですわ・・・。そこで、私のことをま、守るの・・・ですわ」

と言い放って、俺に背を向けた。

・・・守るかどうかは別にして・・・俺は固まったままだった。

俺のメリーに負けず劣らずの美少女・・・しかも、俺のメリーよりも成長した・・・その・・・なんだ・・・身体。

落ち着こう・・・俺は殺されるわけにもいかないが、こんな形でメリーを裏切るわけにもいかない。

 

紫のメリーは、俺に背中を向けるとすぐに寝息を立てた。無防備というか、なんと言うか・・・。

俺は、彼女の寝息に気づくまでの間、身を固くして、動かないように動かないようにと自分を抑え続けて

いた。まあ、なんだ・・・少しでも動いてしまうと、その・・・俺のメリーへの忠誠というか、一途な思いが揺

らいでしまいそうな気がするほどに、先ほどの真っ赤な顔で布団にもぐりこむ紫のメリーの姿が・・・そ

の・・・かわいかったというか、色っぽかったというか・・・まあ、そういうこと・・・なんだが・・・。

寝息に気づいた俺は、彼女に気が疲れないようにそっとベッドの横から離れた。

posted by 126 at 09:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 第七の情景「紫」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。