2007年01月05日

紫4

静かに、鎌を構えなおす紫のメリーと名乗る少女。

わずかに微笑んでいるように見える口元は、俺などを相手にしていないという余裕の現われなのか?

しかし、目は笑っていない。ほんの昨日初めて出会ったときのメリー・・・こいつが黒のメリーと呼ぶ・・・

俺のメリーとは、少し違っていた。

俺がメリーを召喚しえた人間と言うことを知っている。知っているからこそ、俺に対しての心構えがすでに

あると言うことだ、黒のメリーと呼ばれたメリーにはその余裕がなかった。驚きと戸惑い、その後で感じる

喜び、寂しさと捨てられてしまう、置き去りにされることへの不安、そして、何よりも大きな救いと安心・・・信頼。

めまぐるしく感情を動かしてきた俺の大切なメリー。

あいつには、余裕などなかった。

最後になって、俺をからかう余裕を見せたが、しかし、その余裕は安心と信頼に裏打ちされたもの。

けっして、相手よりも自分が優位だと思っての余裕ではなかった。

紫のメリ―・・・。目の前の少女は、澄んだ青い瞳で俺を見下したまま、再び静かに口を開く。

「あなたはよくやりましたわ。もう充分です。」

俺は紫のメリ―をにらみつけることしかできなかった。

目の前の少女は、静かに目を閉じながら、言葉を続けた。

「もう役目は終わりましてよ。だから、おとなしく・・・」

紫のメリーのカッと目を見開いた。

「死んでくださるかしら!」

という言葉と同時に俺の方へと鎌を振り落とす。それを予測していた俺は、すんでのところで鎌をかわし、

床に転がり込んだ。そして紫のメリーのほうを振り返ると、第2撃目の鎌が俺を追いかけてきていた!

もう、頭ではなかった、身体が勝手に反応をしていた。正確に俺の首に向かっている鎌の軌跡から

飛びのいて、ベッドの上に移動、目標を失った鎌は、一旦壁に吸い込まれるように突き刺さった。

「なかなか優秀な反射神経ですこと・・・。」

壁に刺さっている鎌を引き抜くために壁に足をつけて踏ん張っている姿は、先ほどまでの余裕を見せて

いた紫のメリーとは思えなかったが、あの鎌が引き抜かれてしまえば、あの俊敏な切り返しにもう一度か

らだが反応してくれるとは限らない。

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紫3

俺の身体は、その台詞を待たずして動いた。振り返ると同時に振り下ろされるで

あろう大鎌の軌道を予測し、すぐ背後にいる何者かとの間合いを取るために。

俺は、目の前の玄関のほうに飛び込んでから振り返った。

そこには、俺のメリーとは違った何者かが立っていた。

黒いロングストレート。俺のメリーよりも身長が高い感じがする。全体的に薄い紫と濃い紫で構成されたメイド服。

白いレースはふんだんに使っている。非常に上品な感じのするロングスカート。

目は青い。青い目がその表情をよりいっそう冷たいものにしていた。氷の瞳だ。

目の前のメリーと名乗る少女は、振り下ろした大鎌をゆっくりと戻し、再び攻撃に向けて、構えようとしていた。

「お前、だれだ?」

俺は何とか言葉をひねり出した。

実際は、極度の緊張に息も上がっている状況だ。なにせ、昨日の夜は、何度もシュミレーションをして、

もし失敗してもかまわないという気合を持ってメリーを自分の手で召喚した。

今は違う。この紫色のメリーは、呼びもしていないのに現れたのだ。しかも、メリーが明日の朝にまたやってきて

くれるという俺にとっては幸せな状況で死ぬわけには行かない。いや、俺の幸せのためではない。

俺はメリーを裏切らないためにもこんなところで殺されるわけには行かないのだ。俺のメリーに二度と鎌を持た

せないためにも。

「あたしも、メリー。黒のメリーを解放させてもらうの」

黒のメリー?

「黒のメリーって・・・」

俺のメリーの事か?どういうことだ?メリーはひとりではないのか?

俺をさげすむような視線を浴びせながら

「あたしは、紫のメリー。あなたが死ねば、黒のメリーは開放されるの」

紫のメリー・・・。薄い笑いを顔の表面に貼り付けたまま、俺の事を虫けらのように思っている。

そんな表情で俺に言い放った。

「あなた・・・死んでくださる?」

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紫2

「・・・・・」

電話は何も言わずに切れた。

俺は電話を手に持ったまま、身体に緊張感が走っているのを感じていた。

メリー・・・。今の電話はメリーだけど、俺のメリーじゃない。

それはほんのわずかな声の調子・・・麻子に連れて行かれたときのメリーには、

氷のような冷たさはなかった。小悪魔のようないたづらっぽさはあったが、

最初に出会ったときのような、高貴で冷め切った冷たい声の持ち主ではなくなっていた。

それは、俺を信頼して、俺を信じてくれたからだと、俺は確信している。

それを確信できるだけ、あの黒いものの誘惑はすさまじいものだったからだ。

・・・ではアレは一体・・・

RRRRRRRRRRRRRRRRRRR

俺が身を硬くしている間に再び携帯電話が俺の手の中でなり始めた。

またしても、非通知だ。

・・・・誰だ・・・一体・・・・

俺はゆっくりと通話ボタンを押した。

「・・・・・・」

そっと耳に携帯を当てる。

電話の向こうはこちらの様子を伺うように静かなままだった。

「・・・お前、だれだ?」

俺がゆっくりと口を開き、何とか言葉を搾り出す。背筋をいやな汗が伝っている。

「・・・私、メリー・・・」

電話の向こう側の高貴で冷たい声がそう告げる。

俺は大きく息を吸い込んだ。

当然くるだろう次の台詞を受け止めるために。

「・・・今あなたの後ろに・・・いるの」

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紫1

なにか、久しぶりに一人になった気がする。メリーの召喚に成功したのが昨日の夜中・・・。

ちょうど24時間前ぐらいか・・・。

俺は、ゆっくりとクローゼットの前に向かった。そこにはメリーの脱ぎ散らかした服が散乱している。

ひとつ、ひとつ床から拾い上げて、クローゼットに直していく。

こんな事が一つ一つうれしかった。明日の朝になったら、また、メリーに会える。

明日も仕事だが、まあ休んでしまって、メリーと一日ゆっくりと過ごそう。

どこかに連れて行ってあげてもいいな。

何か欲しいものがあるかもしれない。

そんなコトを考えニヤニヤしながら、ベッドに倒れこむ。

なんにせよ、疲れた・・・。

ゆっくりと目を閉じる。

疲れがどっと表に出てくるような感覚。

ああ、このまま眠りの世界に沈み込んで行きたい・・・。

RRRRRRRR

携帯がけたたましくなっていた。

このまま眠らせてくれ・・・。と携帯を無視しようと思いながらも、

まて・・・。メリーからかも知れないじゃないか・・・。と飛び起きた。

そうだ、きっと麻子の家に連れ去られたものの、さびしくて、俺のもとに帰ってこようとして電話をかけてきているんだ。

俺は急いで携帯を手にした。画面は非通知。メリーだ!

なんだかんだ言ってもさびしかったんだろう、うんうん。

俺は、通話ボタンを押す。

「もしもし、私、メリー・・・今あなたの家の外にいるの・・・」

やっぱりメリーか!そうか、玄関口か!と玄関に向かいながら・・・。

俺は立ち止まった。

そして、まだ切れていない電話に向かって言った。

「お前・・・誰だ・・・?」

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本当のこと15

「め、メリー!」

俺はメリーのもとへと駆け寄ろうとした。そうだ、お約束だ!俺はメリーを抱きしめて、メリーは「テヘッ☆無茶しちゃった・・・」とか言うんだよ!うんうん。

しかし、メリーに向かって一直線の俺はその前の麻子の後ろ蹴りでまたもや沈んだ!

俺に無情なけりをかましてきた麻子は

「すごーい!こんなにかわいいのに、こんなに強いなんて・・・」

とメリーを抱きしめて独占していた・・・。おそらく、完全に抱きすくめられているメリーには、麻子の後ろ蹴りが俺に炸裂して、俺が沈んでいることなど知る由もない・・・。

 

「・・・ま、というわけで、この子は預かっていくからね」

すっかり麻子に気に入られたメリーは、麻子に羽交い絞めにされて、無理やり連れ去られそうになっていた。メリーをこんな汚らわしい男の部屋においておくわけには行かない!とか、私の妹分として、私の技のすべてを教えるとか・・・。

「夜はね、うちに来なさい。汚らわしいとかは冗談だけど、あなただって女の子なんですから!」

と古風な面を見せる麻子に、メリーもしぶしぶ了承した。

「明日の朝には、また来るからね」

という言葉とともに、メリーは連れ去られていった。正直なところ、メリーも麻子の人柄が見えたのかも知れない。本当にメリーをかわいがろうとする様子が俺にも伝わってきた。幽霊であれ妖怪であれ、自分の気に入ったものには全力で力を注ぐのが麻子だ。

麻子になら、メリーを預けても大丈夫だ。そう言い聞かせながら、ぽつんと一人で残された部屋ががらんとしてだだぴろい感じがした。

posted by 126 at 08:21| Comment(0) | TrackBack(0) | 第六の情景「本当のこと」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

本当のこと14

下唇をきゅっと噛み、上目使いでにらみを利かせる姿。少し前の恐ろしいまでに冷酷なメリーとは似ても似つかない。普通の女の子がすねて怒っているようなそんなかわいさすら感じてしまう。

「ほう、容赦しないって、どうするの?」

背中でメリーの気配を感じ取りながら微妙な間合いを取り、台詞が終わると同時に背後のメリーに向かって後ろ蹴りをかまそうとする。しかし、メリーもその動きを読んでいたのか、ひらりと右へかわし、けりだされた麻子の右足を跳ね除ける。片足で経っている麻子はバランスを崩しそうなものだが、跳ね除けられた右足のそのままの勢いで床につけ、先ほどまで軸足だった左足でメリーの背後からけりを送り出す。ここでメリーのかわいい顔も真剣な表情に変わった。冷酷ではないにせよ、あどけない表情が影を潜め、真剣なまなざしへと変化していた。麻子の左足のけりをほうきで受け止める。しかし、ほうきはあっけなく折れ、メリーの左肩辺りに麻子のけりが決まった!

「メリー!」

俺は、麻子とメリーの間に割り込もうとした。しかし、よく見ると、メリーはわきの下からまわした右手で麻子の左足をつかんでいた。

麻子の表情が怒りから驚きに変わっていた。

「あなた・・・なにもの?」

ようやく少し冷静になってきたのか、それとも、男の格闘家とも渡り歩けるほどの自分の技を受け止めたこの美しい少女に興味を持ったのか、攻撃態勢を解いた。

「メリー。都市伝説で有名なメリーさんの電話のね」

片ひざをついたまま、麻子を見上げ、麻子の左足を解放しながら、メリーは言った。

かっこよかった。よくこんな柔軟な動きをするメリーの振り返りざまの一撃を交わすことができたものだと、自分でも震えがきていた。いや、それよりも何よりも、強いメリーのかっこよさに惚れ直していた。純粋な笑顔も、線の細いか弱そうな部分も、コケティッシュでいたずらな目線も好きだが、勝気で負けを知らない強い視線は、見るものをしびれさせる。

posted by 126 at 08:20| Comment(0) | TrackBack(0) | 第六の情景「本当のこと」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

本当のこと13

俺がメリーの胸でつぶやいた言葉。メリーはその言葉に反応して、俺の頭を強く抱きしめる。

俺はメリーに包まれている感覚の中で本当に温かいものが心に待たされていくのを感じていた。

大きく息を吸い込むとメリーの香りが体を満たしていく。懐かしい香りだった。

 

「今度は、簡単に死なせない。もしも、あなたが死ぬようなことがあっても、もう二度と鎌を手にしたりはしない」

メリーは俺を抱きしめながら、俺の頭に唇が触れるかどうかのところで言った。

 

俺はゆっくりと顔を上げる。メリーの美しく整った顔がすぐそばにあった。やさしく、目を細めて微笑んでいる。その目はゆっくりと閉じていった。俺もまたゆっくりと目を閉じ・・・・横からの激しい衝撃を感じていた・・・。

衝撃?・・・・目を開けると、目の前にメリーの美しい顔はなく、天井と仁王立ちの・・・麻子。

「えーい!うっとおしいわ!私の前でいちゃつくな!」

仁王立ちどころか、仁王様の顔で俺を見下している麻子。

「さっきから黙って聞いてりゃ、わけのわからないことばっかり言って、いちゃいちゃいちゃいちゃいちゃいちゃと!!!」

「いや、麻子?別にいちゃついてるわけではなくって、その・・・なんだ・・・本当のことを・・・」

「何が本当のことだぁ?真剣に聞いてりゃ、都市伝説だぁ?黒いものだぁ?ふざけんのもいい加減にしてよね!」

「いやだから、本当に、メリーは・・・」

ボルテージの上がりまくった麻子には何を言っても通じそうになかった。

完全に目の前の俺を完膚なきまでに打ちのめさないとおそらくはこの怒りは静まらないだろう・・・。

潔癖症な麻子にとっては、刺激の強いものだったのかも知れない。なにせ、付き合っているときでも、手をつないだのがもっとも勇気ある行動だったのだから・・・。

「お姉さん、まって!」

怒れる猛牛のような麻子の背後から、声をかけるものが・・・ってメリー・・・。

ほうきを持って、麻子に負けず仁王立ちで部屋の真ん中で麻子をにらみつけている。

「彼をいじめるなら、容赦しないんだから!」

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本当のこと12

「最後まであなたを信じることができなかった」

メリーの表情が曇るキキキ。申し訳なさそうにキキキ

違った、なにもかもが違った。心の壁がまったくない。俺を信じきっている。それは本当に懐かしい

感覚だった。

 

「でも、わかったよ。あなたがどれだけ私のためにだけ生きて、そして死んだのか」

メリーは微笑んだ。その目にはうっすらと涙が光っている。俺は何もいえなかったただ、まだ混乱して

回り続けている頭の中と、そして、目の前のメリーの可憐さに別の意味でくらくらしていた。

 

「死んじゃったのに、痛くて苦しくてつらかったのに、自分の痛みだけを受けていたら楽だったのに、

そのまま死んで行けたのにキキキ

メリーのほほに涙が伝っていく。しかし、その表情は泣き顔なんかじゃない。いとおしいものを見る

ように目を少し細めて口元には微笑みを残した

 

「それなのにキキキ私のところに来てくれたんだよね」

妄想が、再び走り始めた。俺の中で、死に逝くものが見るという走馬灯。それと同じ速さでキキキ

「聞こえたよ。あなたの声。ちゃんとキキキ聞こえたよ」

最初から、すべてを、妄想の時間のすべてを、光の速さ追いかけていた。

「ありがとうキキキね」

そのとき光がはじけた!キキキキそうかキキキキ。俺はあの時妄想を見ていたんじゃないんだ。

俺は、妄想の中にいたんだ。

 

俺は漠然と頭の中に浮かんできた言葉をそのまま口にした。

すべてを理解できたわけじゃない。しかし、俺は、こういうしかなかった。

「そうか、メリーもキキキあそこにいたのかキキキ

 

俺の中の混乱は、ゆっくりと収まっていった。頭がすっきりしていくのと同時に胸が熱くなってくるの

がわかった。

ヤバイキキキ。なきそうだ。もう二度と会えないと思っていたものに会えたような錯覚。

いや、実際に俺は一度あの妄想の中で、人生を一回分メリーとともに過ごし、そして、死んだ。

メリーはじっと俺の方を見ていた。そして、微笑みながら、うなづいた。

そうなんだ。俺は、自分の思いが伝わらぬまま死んで行った。死んでなお、メリーの事を見守るような

存在として、メリーのすぐそばに飛んでキキキ

メリーキキキ。本当の今ここにいるメリーが、俺の愛したメリーが、俺の手の届くところにいる。

俺の視界が、ゆがんでいた。泣くまいと思っても、どんどんとあふれ出す涙。

ぼやけた視界の向こうでメリーが動く。俺の太ももが軽くなる。

どうやらメリーが立ち上がったみたいだ。

ふわっキキキ

一瞬にして何かに包まれた。白くてやわらかい感触キキキ

「本当にありがとう。もうね、知ってるの。あなたが何故私を呼んだのか、私を呼ばなければ成らなか

ったのか。そして、どうしたかったのか。」

俺は、この小さな少女に包まれて抱かれていることに、とてつもない安心感を感じていた。

「だからね、本当は無理して言わなくてもいいんだよ。でもキキキ

俺の頭の上にメリーのほっぺたがピトッと乗っかってくる。

「でもねキキキ。何回でも聞きたいんだよ。あなたの優しい言葉、とてもキキキうれしい言葉」

俺は大きく息を吸い込んだ。何度でも聞かせてやるよ。

そうだ、俺はそのためにあの妄想の中から戻ってきたんだ。

黒いものに操られないために、

やつの思い通りになんかさせないために、

メリーを大切にしてやるために、

それが当たり前だと、当たり前のことなんだと、メリーに伝えるためにキキキ

「メリーキキキ

俺は、メリーの腕に抱かれたまま、言った。

「メリー、大好きだ」

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本当のこと11

メリーの目はとても優しかった。

そしてその表情をすごく懐かしく感じた。

 

キキキ交通事故キキキ

メリーの言葉に反応したのは、意外にも麻子のほうだった。

「どういうこと?交通事故って?」

 

メリーは、目だけで麻子の動きを制した。

俺は、メリーの優しい目とそして自分の中でめぐっているあの記憶キキキ家を出たとたんに、交通事

故に会い、病院に運び込まれた記憶キキキそれは黒いものが俺の願望を使って見せた妄想の中での自

分の最後。妄想とはいえ、しっかりとした時間の感覚があった。そして交通事故の際の痛みは現実そ

のままだった。キキキあの記憶が頭の中をめぐっていた。

 

俺は混乱する頭を整理しようと、首を横に何度も振った。

メリーは一度立ち上がり、麻子に少し待っていて欲しいとちいさな声で言った。その後すぐに俺の方

に向きなおり、すとんと太ももの上に座った。

 

俺の肩に手を置き、まっすぐに俺を見た。

俺はまだ混乱していた。あれはキキキあの妄想は、メリーとともにすごした時間は、単なる妄想で、

黒いものが見せたもので、何故キキキキ

なぜキキキメリーが知っているキキキ

 

「あの時は、ごめんなさい」

メリーが俺をまっすぐ見つめながら、本当に優しい顔をした。

この顔キキキこの表情キキキそうだ、メリーの何かが違うと感じていたのは、この表情だ。

自信ありげで、そのくせやさしい。

ほんの少し前、少なくとも、この今着ている白いワンピースに着替える頃には、見せたこともない

表情。なのに俺は懐かしく感じていた。つい最近なのに、遠い昔に見たような感覚が俺の中にあった。

posted by 126 at 08:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 第六の情景「本当のこと」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

本当のこと10

メリーは俺が腕にこめた力に反応して、少し背筋を伸ばした。

「だんだん近くに行くよって知らせながら、人がモノになってしまうことを想像させるの」

そうだ、何もおびえる必要なんかない。俺はお前にひどいことなんかしない!もう二度と、魂を

けづりながら、鎌を振るうことなどしなくてもいいんだ。俺は心の中でつぶやいた。

「そうすることで、私は自分の中の黒いものを何とか沈めてきたの」

黒いものキキキメリーの中にもあの恐ろしい黒いものがあるというのかキキキキキ

「モノたちの恨みを癒していくことで、自分の中の激しい衝動を沈めてきた」

鎌から俺の中に流れ込み、俺に恐ろしいほどの衝動を感じさせ、また俺に長い長い妄想を夢見さ

せた黒いもの。俺はこれからの将来、自分の願望とともに人生一回分の長い妄想を味わった。

そうだ、俺は妄想の中でメリーを置き去りにして一度死んだ。悲しみにくれたメリーが、再び

鎌を手にしなければならないほどに。一度味わってしまった安らぎは失ったときにその大きさを知るのだ。

しかし、俺は戻ってきた。黒いものに抵抗し、メリーを本当に大切にしてやるのだと誓って。

「けどね、もう大丈夫」

メリーは、少し節目がちだった目をまっすぐに麻子に向けた。

「この人がね、本当に大切にされるって言うのはどういうことなのかを教えてくれたから」

は?キキキキキ。俺はそんなこと、まだ教えてやれてない。少なくとも、メリーに直接自分の思いの

すべてを告げたことはないだろう。

「大切にしないものを追いかけてばかりいたら、私も大切にしないものと同じ。黒いものを沈めて

も、結局黒いものに操られているんだと思う」

俺の手を握る手に力がこもった。これはメリーの宣戦布告だ。あの黒いもの、鎌への宣戦布告だ。

「だから、私はもう操られない。お人形じゃない!」

ベットのしたからでも、少しでも俺が弱ると俺の心の罠を仕掛けてこようとするほどの力を持つ鎌に

戦いを挑んでいるのだ。俺は力を込めたメリーの手を支えるように握り返した。

「そんなものに屈しなくてもいいような強い魂があることを知ったの」

そしてキキキキメリーは、首だけ後ろを振り向き、言った

「今度は、交通事故でなんか死なせないよ」
posted by 126 at 08:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 第六の情景「本当のこと」 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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